注目記事山下県政 世論調査の全結果掲載

金曜時評

地方創生も人次第 - 編集委員 松岡 智

 組織を成長、活性化させるのは先見性や勤勉努力、運といったものもあろうが、結局は人材であることは多くの人が認めるところだろう。

 今春、企業の若手人材の確保にとって大きな変化があった。新卒学生採用に関する経団連の新ルールだ。従前は卒業予定の前々年12月から説明会、前年4月から面接などの選考、10月から正式内定が解禁日程。新しい解禁は、正式内定はそのままに説明会が前年3月、選考が8月からと、選考期間が短くなった。

 解禁日の繰り下げ、選考期間短縮は、中小零細企業の多い県内事業者の人材確保に影を落とす。従来の就職活動が大手の後に中小に、との流れがあるからだ。

 県中小企業団体中央会による会員企業への影響調査でも、大手への短期集中の動きが中小への認知度低下や採用活動の長期化を招き、結果的に人材不足につながるとの懸念が広がっているようだ。

 さらに、多様な手段で学生と接触し、解禁前に囲い込みを図る大手もある。経団連と無関係のIT(情報技術)関連企業などは、従来通りの採用を進める。県内中小の懸念はさらに深まりつつある。

 こうした中、同中央会などは学生への県内中小の実態周知の強化に着手する。学生が企業を知る入り口となるホームページ充実への支援、目玉企業の参加やイベントを盛り込む企業説明会の魅力向上、大阪や首都圏での企業説明会の展開などが企図されている。また、大学側のニーズが高く、事業への理解促進とともに人材の見極め、確保に有効なインターンシップの拡充は各企業が視野に入れる。

 県でも、協定を結ぶ奈良労働局との連携で、新卒向け求人開拓のための事業所訪問、大学への企業情報提供を拡大。若者を狙ったUIJターン促進窓口を東京にも開設し、市町村の協力を得て県内で暮らす場合の生活情報の提供、首都圏の大学へのアプローチも進めるという。

 県経済の将来を担う人材の確保は、政府が提唱する地方創生とも関係が深い。何より3選を果たした荒井正吾知事が掲げる、ベッドタウンからの脱却と内発的経済改革の流れに不可欠のものだ。

 経済が全てではないが、経済の発展は財政面を潤し、暮らしの多方面に充足をもたらす。女性を中心に県内就職希望の声が高まっているとも聞く。多くの人材を県に呼び込むため、企業とともに県や市町村、各種団体、メディアそれぞれが何ができるか知恵を絞りたい。

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