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金曜時評

消滅してたまるか - 編集委員 山下 栄二

 民間の日本創成会議が、昨年5月に発表した数字に衝撃を受けた人は多かっただろう。少子化、人口の東京一極集中が進み、2010年から40年までの30年間に若者女性が半分以上減る市町村数を全国で896自治体と推計し、「消滅可能性都市」とした。県内39自治体の中で実に26が含まれ、その中で特に危険な自治体は17と、大阪府の2、兵庫県の4と比べても際立って多い。消滅するかは別として自立できなくなると危惧される。県にとって深刻な問題なのだ。

 同会議の座長である増田寛也(元総務相)編著の「地方消滅」(中公新書)は「新書大賞2015」を受賞、ベストセラーとなっている。「地方消滅」は、消滅しないための処方せんとして、子育て支援や地域の活性化策を提示しているが、最も注目されるのは、地方において人口流出の「ダム機能」を果たす地方中核都市の構築であろう。雇用があり若者に魅力がある地方中核都市があれば、周辺の都市にも波及して中核都市と周辺に若者が定住できるようになるという。

 これを県に当てはめると、県中部に地方中核都市を形成する必要があると考える。県南部の過疎化の大きな要因は、若者の働く場所が少ないことだ。県南部から県北部や大阪府に通勤するなら時間がかかりすぎるが、中和なら可能ではないだろか。雇用創出のため企業、商業施設などの誘致を進め一層の都市化を図りたい。県庁機能の移転や、複数市の合併なども視野に入れるべきだろう。

 もっとも、人口流出の「ダム」となる地方中核都市については、異論も多い。中核都市に「選択して集中」するのは、人口減を食いとめるための様々な努力をしている自治体を踏みにじるというのである。「消滅してたまるか」という情熱は大切だ。共存共栄のため、地方中核都市と周辺自治体との広域連携が大切なのはいうまでもない。

 人口減少の克服や地域振興を図るため安倍政権は昨秋に地方創生本部を発足。県は昨年8月に県地方創生本部を設置、これまでにまとめた地方創生関連事業は260事業に上る。しかし、地方創生は少子化対策など結果がすぐに表れないものが多い。長期的で粘り強い取り組みが望まれる。

 4年に一度の統一地方選が迫っている。地域の将来のため、各候補がどのようなビジョンを描いているのか、有権者はしっかりと見極める必要があるだろう。

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