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国原譜

長い時間をかけてその土地の風土に適応し…

 長い時間をかけてその土地の風土に適応してきた地方野菜のようなもの―。本紙7日の特集で、県教育委員会の森本仙介さんが民俗文化財を語った言葉が印象に残った。

 逆に言えば限られた土地でしか育たない。生育が悪いからと、肥えた土地に移植しても枯れてしまうだろう。土となるのは世代をついで重ねられた歴史や自然、そして人だ。

 都市部には都市部に適応した地方野菜が育っている。土の豊かさは人口ではない。ただ、人という要素を失えば、民俗文化財は過去の遺物になってしまう。それなら土を肥やせばよい。

 五條市大塔町篠原に伝わる篠原踊りが、25日に地区内の神社で奉納された。集落の人口は16人。昨年は踊り手不足で奉納できなかった。

 保存会は初めて地区外に踊り手を募り、半年間練習を続けて当日に臨んだ。男女16人による奉納は壮観だったという。

 「民俗文化財は個人から個人に伝承されていくもの」と森本さんは言う。教える人の姿が教わる人に生き写しとなり、その土地に溶け込んでゆく。生活世界は違っても、篠原地区の遺伝子は受け継がれて絶えない。(増)

 

 

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