注目記事山下県政 世論調査の全結果掲載

金曜時評

経済以外にも争点 - 客員論説委員 小久保 忠弘

 衆院選の投開票を明後日に控えて、各種調査は選挙熱の低調を伝える。投票率は前回を大幅に下回りそうだともいう。ただでさえ忙しい時期に、選挙どころではない人も多い。それが解散の狙い目であったとしたら、あまりに姑息に過ぎるが、そうであったとしても、選挙は憲法で保障された国民の権利であるはずだ。

 「選挙を前にして、できない約束なんてあるわけがない」。候補者が唱える大盤振る舞いの公約に、つい皮肉も飛ばしたくなろう。だが、それでも政見を聞き分け正しい判断をすべきだ。制度の不備はあっても、私たちは選挙で国政に参加できる民主国家に生きているのだから。

 消費税増税を当初予定より1年半遅らせることを評価せよというのも変な理屈だが、これを解散総選挙の理由とされて、ありがく思う人がどれだけいよう。増税を先送りしても国の借金1千兆円は消えない。国民1人当たり約800万円の借金を抱えるという。途方もない数字だが、これを解決する道筋をつけるのが政治の役割だ。選挙中、財政再建についての言及は各党ほとんどなかった。「アベノミクスに是か非か」と経済政策を問うだけが選挙の争点ではあるまい。

 日銀の金融緩和による円安が止まらない。輸入品の値上げ、原材料高が進み、ハイパーインフレと財政破綻に向かう恐れも出てきた。経済の専門家でも不安視する向きが多い。はたして「この道しかない」のかどうか。円安・ドル高と株式の高騰は一部の輸出大企業、富裕層が潤うだけという状況に変わりはない。もうしばらく待てば下流にも「おこぼれ」が届くというが、どうだろうか。

 一昨日来県し、JR奈良駅前で演説した安倍晋三首相は「円安で影響が出る家庭には灯油代やガソリン代をお配りする。困っている企業には銀行が融資をする」とぶち上げていたが、順序が逆だろう。対して野党側は批判に躍起だが、肝心の対案に具体性がなく説得力に乏しい。

 政権復帰してからの「安倍政治」を振り返ると、その強引な政治手法が目立った。強権的姿勢に危機感を抱く人も多い。強行採決で成立させた特定秘密保護法や、集団的自衛権の行使容認閣議決定にみせた手法は危うさを感じさせる。そのことの是非も判断材料になろう。

 願わざる選挙だが、まずは万難を排して投票に行こう。選挙区に意中の候補がいない場合も、比例では考えの近い政党が見つかるかもしれないのだから。

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