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金曜時評

さらに論議深化を - 論説委員 北岡 和之

 兵庫県議会での〝号泣議員〟問題や第2次安倍改造内閣の女性閣僚多用などのせいか、県内でも議会への関心が少し高まったように思う。先月16日に開会し、今月6日に閉会した9月定例県議会は事前委員会や代表・一般質問、予算審査特別委員会などがあった。現在は閉会後の決算審査特別委員会が開かれている。

 目立った“熱い論戦”はほとんどないものの、それでも県施策の方向性をめぐる基本的なやり取りは有意義だ。

 例えば、今月1日の予算審査特別委員会の総括審議。県が「農に強い食の担い手」養成を目的に学科を創設して平成28年4月の開校を目指す「なら食と農の魅力創造国際大学校」をめぐって交わされた、荒井正吾知事と宮本次郎議員(共産党)の論議は注目された。

 宮本氏は、世界に通用する一流シェフを養成して「高級レストラン」にまでつなげる県の施策に疑問を呈した。家計の苦しい「庶民の生活実感」からはかけ離れているのではないか、富裕層のためのレストランではないか、と県施策の優先順位として疑問あり、とした。

 これに対して荒井知事が示したのは、農と食に関して県のグレードアップを図ろうとすれば、本物の味・料理を提供する場がなければならないという考えだ。「(提供料理の質・価格を)低めに設定してはだめ。高めに設定してこそ、裾野へ広く展開できる」という指摘は説得力がある。知事は、月に1回、年に1回でも本物の味に接する機会があれば、これをきっかけに「奈良の味」全体が良くなる、安くておいしい料理が生まれる可能性がある、という見通しを語ったのだ。

 この論議からは資本制社会や格差、貧困、生活といったキーワードをめぐる視点・姿勢の違いが浮き彫りになる。

 私見を挙げてみる。例えば自動車だが、わが国は先進的な車社会。超高級車に乗れる人は少ないかもしれないが、庶民にも手が届く小型車や軽自動車は生活を便利にしている。無駄の象徴のように言われる自動車レースにしても、消滅しないのは人間の本質力への挑戦に加え、実用車への技術利用という庶民の生活への視点も内在しているからだろう。

 個人的には、新たな段階への見通しという点で、これまでの論議では荒井知事の物言いに分があると見る。ただ、荒井知事と宮本氏のやり取りが論議を「深めた」のは確か。今後も県内の各議会でこうした“論戦”が増えるよう期待する。

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