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金曜時評

県観光振興の柱に - 編集委員 山下 栄二

 8月に奈良市の奈良公園、三条通り周辺を歩いていたら、外国人観光客が多いのに目をみはった。2人に1人は外国人ではないかと思えるくらいだった。外国も夏休み期間なのだろうか。グループ、家族連れ、若いカップルが、笑顔で鹿と戯れていた。

 外国人観光客の増加は統計的にも実証されている。県のまとめによると、今年1~6月に県を訪れた外国人観光客は30万2030人で、前年同期に比べて10万9750人(57%)も増加している。

 増加の背景としては、円安の影響が大きい。高度成長期には物価の高い国として知られた日本だが、近年のデフレによって外国人にとって旅行しやすくなった。さらにはタイ、マレーシアにビザ免除や関西国際空港のLCC(格安航空会社)増便が観光客増加の要因と県は分析している。また、東南アジア方面などへの観光プロモーション(県など主催)に参加するホテルや旅館が県内で増えたのも大きいという。

 急増する外国人観光客に対応するため、県は「外国人観光客交流館」(仮称)を奈良市の旅館「猿沢荘」(昨年8月に閉館)を活用して整備する。宿泊客室24のほか、低い予算の旅行者(バックパッカー)向けに相部屋を設ける。茶道、着付けなど日本の伝統が体験できるスペースなどもあり、外国人県内周遊の拠点を目指すという。

 奈良市を訪れるのはかつて修学旅行生が多かったが、少子化、修学旅行の多様化で今後はさらに減少の一途をたどるだろう。国内の団体旅行客の増加も期待できない。これからの県の観光振興戦略として、外国人観光各の誘致を図るのには大いに賛成したい。

 寺院、奈良公園、鹿などは日本人には小さいころからのなじみの光景であるが、外国人にとっては新鮮に映るのではないか。

 ただ、二度、三度と県を訪れてもらうリピーターを呼びこむためには課題も数多い。これは外国人に限ったことではないが、奈良は早い時間帯で営業を終える店が多く、東京、大阪、京都にあるような夜の観光を楽しめるスポットが少な過ぎる。外国人が安心して、飲んだり食べたり遊んだりできるエリアは絶対に必要だ。

 観光振興には行政、観光、旅行、交通に携わる人たちの協力が不可欠だろう。「おもてなしの心」に期待する。

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