注目記事2024年春 奈良県職員人事異動 発表!

金曜時評

労働力不足を前に - 編集委員 松岡 智

 少子高齢化による労働力不足が懸念されている。本年度の経済財政白書でも、労働力人口の減少と女性、高齢者の労働参加の必要性に言及。とりわけ女性に関しては、子育て対策や労働市場の柔軟性で、100万人の労働力人口を生み出す方向性が示されている。

 この流れに沿うように、県内の創業支援の講座でも女性限定、優先のものが目を引く。創業は雇用を生むが、女性ならではの事業であれば、女性の雇用機会の増加が見込める。創業支援に積極的な日本政策金融公庫奈良支店の「女性がキーワード」との言葉も大げさではない。

 しかしながら、女性が意欲的に経済社会に飛び出そうとする機運を高めるには、整えておくべき事象もある。

 厚生労働省が全国約3800企業から有効回答を得た調査では、女性管理職(課長相当職以上、昨年10月1日現在)の割合は6・6%にすぎず、3年間ほぼ横ばい。登用促進を図っている企業も4割に満たない。現政権は、平成32年に指導的地位の女性の割合を30%にするとしているが、現況では夢物語だ。

 女性労働力を求めるなら、高みを目指す女性もいることを想定した組織体制を構築しておくべきだろう。女性の活躍は一定レベルまでで十分との考えなら、女性の力を都合よく便利使いする気かと言われても仕方ない。ちなみに、企業ではないが、県庁での女性管理職(課長補佐以上、一部組織除く)の割合は、昨年4月時点で9・2%にとどまっている。

 もう一つ、子育て世代の女性の社会進出には、保育園や学童保育などの充実とともに、柔軟性のある勤務時間と、対応する社内環境整備も欠かせない。

 一連の施策は同時並行的な検討、実践が、効果の点からも望ましい。だが、関連事業に携わる複数の担当課が同様の施策を講じながら、横のつながりが希薄なためにむだが生じていた例も見てきた。

 能力は高いが家庭にとどまっているといわれる奈良の女性の労働力。それを引き出すには、必要な施策と関係機関を今一度洗い出し、無駄なく総合的に施策を実践できる官民組織を構築するか、すでに同様の組織があるなら内容を見直すことが、まず不可欠だろう。

 国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口では、約50年後の人口は現在の約7割、生産年齢人口はほぼ半減するとされる。まだ先のことと高をくくるなら、実りのないまま時は過ぎゆく。

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