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金曜時評

関心新たに支援を - 編集委員 松井 重宏

 東日本大震災から3年。被災地では緊急対応の時期を一定終え、地域の基盤再建へと順次、復旧・復興作業が進み始めている。ただ各地で避難生活を送っている被災者はまだ27万人近くおり、今も約10万人がプレハブ仮設住宅での厳しい生活を強いられている。

 避難生活による「震災関連死」は3000人を超えており、古里への帰宅、新たな町づくりなど、本格的な復興は、むしろこれから正念場を迎える。そして東京電力の福島第1原発事故では廃炉や周辺地域の除染には、まだまだ多くの時間が必要だ。

 当然、政府には引き続き積極的な施策、予算の確保など努力が求められるし、全国の都道府県、市町村など幅広い支援の継続も欠かせない。そのためにも生々しい記憶を風化させず、時間を超えて関心と支援を喚起していく住民や地域の取り組み、情報発信力も問われることになる。

 平成23年に発生した台風12号豪雨災害(紀伊半島大水害)の被災地でも抱える課題は同じだ。復興の道半ばで関心が薄れたり、他の行政課題のはざ間に埋没させてはいけない。県南部などでは水害が毎年のように繰り返し起きており、過疎や高齢化、また林業不振といった問題も含めて、いかに息長く対策を継続していけるかが鍵をにぎる。県を挙げた地域復興の取り組みを改めて考えたい。

 開会中の県議会2月定例会で審議されている県の来年度予算案を見ると、災害に強いインフラ整備として道路、河川の改修事業が盛り込まれているほか、被災者の生活支援、新しい集落づくり、地域の産業振興など一通りのメニューがそろう。

 ただ県が策定した復旧・復興計画では来年度で集中・復興期間を終了、一つの節目を迎える。その後は平成32年度までをめどに中長期的な取り組みに移行することになるが、県民の関心を、どう県南部地域に集め、つなぎとめていくのか。南海トラフに起因する巨大地震の発生も視野に入れた地域の「強靭(きょうじん)化」が急がれる。

 そうした中で今年11月16日、大淀町と川上村を会場に開かれる「第34回全国豊かな海づくり大会〜やまと」は、南和地域に人々の目を向けさせる機会の一つになるだろう。昨年の大会では式典出席で熊本県を訪問された天皇、皇后両陛下が、水俣市で水俣病の患者らと懇談され注目を集めた。海のない奈良県で開かれる同大会だが、新たな情報発信、交流のきっかけになればと期待する。

 また県は来年度予算案で、南部地域観光復興プロモーション事業に引き続き約2500万円を計上するなど観光客の誘致にも取り組む姿勢を見せるが、おざなりな対応にとどまらない“本気度”が試されそうだ。被災した十津川村は自ら「源泉かけ流し宣言」と「世界遺産登録」の10周年を記念して4月からイベントを開催、村の魅力をアピールする。その後押し、盛り上げも図りたい。

 

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