注目記事2024年春 奈良県職員人事異動 発表!

金曜時評

なくそう詐欺被害 - 編集委員 辻 恵介

 8月30日付の本欄で「狙われるお年寄り」として、還付金名目の振り込め詐欺などの状況を取り上げたが、今も各地で高齢者が大金を騙(だま)し取られる被害が続いている。高齢者が汗水たらして長年働いてためたお金を言葉巧みに奪う所業は卑劣で許しがたい。

他府県での被害事案を紹介する。

「会社名義の通帳が入ったバッグを盗まれた。契約に必要な1千万円の都合をつけてほしい」(長男を装った男、千葉県市川市)▽「会社の契約書が入ったかばんをコンビニのトイレに忘れた。契約に行くのでお金(1500万円)が必要」(同、神奈川県川崎市)▽「会社でミスをした。○日までに返すので500万円貸して…、あと300万円必要…」(おいを装った男、同横浜市)。

 会社絡みの「設定」が多く、長男やおいの「一大事」と思い込んでパニック状態に陥り、「助けなければ」と思い、送金したり、偽の同僚らに現金を渡してしまったようだ。

 身内の声を忘れるぐらい、普段から疎遠なのだろうか。核家族化で、親子をつなぐ糸が細くなったところへ、悪徳なクモの糸が絡み、財産を奪っていく構図が見えてくる。現代社会の希薄な人間関係に、あざとく付け込んだ犯罪といえよう。別のパターンもある。

 「不倫をして和解に200万円がいる…、消費者金融に借金…」(息子をかたる男、3日間に5回、計750万円。愛媛県今治市)▽社債の購入を頼まれた後、「名義貸しでの購入のためトラブルになっている…」(会社員を装った男、解決金として十数回にわたり計3600万円を郵送、島根県浜田市)。

 手を変え品を変え、詐欺師たちは忍び寄ってくる。次は警察官を名乗る事案だ。

 「みずほ銀行に警察の捜査が入っている。預金を別の銀行に移した方がいい…」(京都府警の警察官を装った男)、続いて「職員を行かせるので現金(500万円)を渡すように。夕方には新しい通帳とカードを届ける」(銀行協会職員を名乗る男)。京都市内の被害者は、時事問題を利用した手口にやられた。

 こうした事態を受けて、被害を防ぐため、県内でも具体策がとられるようになった。

 管内で今年、4件被害総額2400万円のオレオレ詐欺が発生した五條署などは、電話機に取り付ける防犯指導「騙されないカード」を作製し、五條市と十津川村、野迫川村の全高齢者世帯に配布を始めた(17日付1社面)。

 3自治体で高齢者世帯は約3200あるが、計155人の民生児童委員が協力。家庭を訪問する見守り活動に合わせてカードを配る。カードは警察官のイラスト入りで「ちょっと待って!」と注意を喚起。いざというときのために、相談できる人の電話番号をあらかじめ書き込んでおくそうだ。

 「騙されないカード」は、オレオレ詐欺対策の“切り札”になるかもしれない。他の自治体でも、被害防止へ向けて具体的、かつ積極的な取り組みを求めたい。

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