注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

犯罪防ぐ地域の絆 - 編集委員 松井 重宏

 きょう11日は、犯罪対策閣僚会議が平成17年から設定している「安全・安心なまちづくりの日」。防犯は自然災害への備え、食の安全確保などとともに、市民生活を守る上で最も重要な取り組みの一つ。司法や行政が役割を果たすだけでなく、地域住民も積極的にかかわることで、社会全体の荒廃を防ぐことが可能となる。明るく活力があり、犯罪のない地域の実現へ、この機会に県民一人ひとりが身近なところから防犯について考えたい。

 具体的には、県警が進める地域の自主防犯活動「チャレンジ“絆”」の取り組みが注目される。声かけ運動で住民のコミュニケーションを強め、街角にのぼり旗を立てるなど犯罪を許さない姿勢をアピール、犯罪者が近付きにいく地域を目指す。実施地区は既に県内全域に拡大。今月9日には御所市が全自治会で取り組むことを決め、市役所で「日本一絆のつよい街・御所市」開始式を行った。

 東日本大震災では、非常時に住民同士が助け合う地域のつながり、「絆」の大切さがクローズアップされたが、日常的な防犯の取り組みでも地域の安全・安心を考える上で「絆」は欠かせないキーワードとなりそうだ。

 また県内では平成16年11月に女児誘拐殺人事件が発生。あの卑劣な犯罪を重い教訓として見守り活動が広がった経緯もあり、住民による防犯組織、青色パトロールの取り組みも浸透。さらに大学生による団体「あっぷりけ戦隊!奈良まもりたい」などの活動も始まり、さらに幅広い住民参加が期待される。

 ただ「絆」には課題もある。濃密な人間関係から生じる、さまざな軋轢(あつれき)がいじめや暴力に発展しないよう、公的機関による適切な調整と介入も求められそうだ。

 政府の犯罪対策閣僚会議が設置されたのは平成15年。その前年まで刑法犯の認知件数が7年連続して戦後最悪の数字を更新し続けてきたことから、社会不安を払拭し「世界一安全な国、日本」の復活を目指すとして取り組みを始めた結果、刑法犯の認知件数は同年から減少に転じ、昨年は全国で約140万件とピーク時の半数にまで減った。ただ刑法犯による死傷被害者は昨年、約3万4000人で前年比7・5%増。財産犯の被害額も平成23年以降、増加傾向にあり、加えて県内でも被害が続出する振り込め詐欺、還付詐欺など高齢者を狙った犯罪を見れば、到底「世界一安全」を実感することはできない。

 県警はメロディーパトロールを今年2月から県内全域で実施。9月からは飲食店などの防犯カメラ画像を警備会社2社から提供してもらうシステムの運用を始めた。いずれも住民による「絆」活動と合わせて「犯罪者を寄せつけない」地域のアピールにつながる。

 先月のIOC総会で安倍首相は五輪の東京招致に向け、演説冒頭で「今も、そして2020年を迎えても世界有数の安全な都市、東京」と訴えたが、県内も「安全・安心」を世界に誇れる地域にしなければ。

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