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金曜時評

期限延長は当然だ - 編集委員 増山 和樹

 県内に未曽有の被害をもたらした紀伊半島大水害から2年が過ぎた。仮設住宅では今も83世帯、165人が生活し、元の暮らしは戻っていない。県は2日に開いた復旧・復興推進本部会議(本部長・荒井正吾知事)で、仮設住宅の供与期限を延長すると確認した。当然の判断であり、国にも善処を求めたい。

 災害救助法に従えば、仮設住宅は最長でも2年3カ月しか設置できない。安全上の理由もあるが、点検回数を増やせば危険性は減らせる。県も2カ月に1回以上の安全確認を行う考えだ。

 平成7年の阪神大震災や一昨年の東日本大震災では、特定非常災害指定によってこの期限が延長された。県は紀伊半島大水害への適用を国に求めていくという。指定などの特例措置が認められない場合、人道的対応を優先した県の方針と法律がぶつかることになりかねない。

 不自由な避難生活に加え、仮の住まいさえ違法と言われては、入居者の精神的負担はさらに高まる。被災者が仮設住宅からの退去を余儀なくされたり、引っ越しを繰り返すような事態は避けねばならない。

 入居者が帰れないのは、土砂ダム対策などの工事が進行中で、安全が確保されていないことも大きい。決壊すれば甚大な被害が予想された土砂ダムは、埋め立てや砂防工事が進んでいるが、完了は平成28年度末になるという。土砂崩れの危険から避難指示が解除できない地区もある。

 避難生活が続く現実を思えば、復興はまだまだ途上と言えるだろう。県民一人一人がそのことを認識し、常に意識を傾けていく必要がある。

 先月30日から、紀伊半島大水害などを教訓に創設された「特別警報」の運用が始まっている。「数十年に1度の現象」を基準に、市町村単位で発表される。それまでの注意報や警報では、差し迫った危険を伝えられなかったからだ。

 ただ、特別警報は一定時間の合計雨量を目安に発表されるため、間に合わなかったり、予測困難なケースもあり得る。気象情報に注意しながら、「自分の身は自分で守る」という心構えも必要だ。

 台風の進路にも十分注意したい。紀伊半島豪雨を生んだ台風12号は、明治22年に十津川水害をもたらした台風とほぼ同じコースで日本列島を縦断した。いずれも四国沖から室戸岬近くに上陸し、瀬戸内海を経て北上するコースだった。

 2度目の東京五輪が決まり、国内は喜びに包まれている。国立競技場に上がった聖火が56年ぶりに戻ってくる。県内も観光面を中心に盛り上がりを見せるだろう。昭和39年の前回五輪は戦後復興の象徴だった。

 東日本だけではない。災害から立ち上がろうとする国内全ての被災地にとって、希望をもたらす「復興五輪」であらねばならない。

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