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金曜時評

政治の常道に反す - 客員論説委員 小久保 忠弘

 橋下徹大阪市長の「戦場で慰安婦は必要だった」「沖縄の米軍は風俗業を活用すべき」といった発言が内外に波紋を広げてから10日以上たったが、反発の声は広がるばかり。7月に予定される参院選まで2カ月を切って、日本維新の会は党首の暴言で存亡の危機にある。すでに公認を辞退する候補予定者も現れはじめ、各種世論調査でも支持率を落としている。

 そんな中で、昨年末の衆院選で政権再交代を果たした自民党は、円安誘導と金融緩和による「アベノミクス」が絶好調。参院選を圧勝し、安定政権へまっしぐらに進みたいところだろう。さらに、この余勢を駆って与党に有利な「衆参同日選」を行うとする観測もある。ダブル選を公然とささやく向きもあり、この際「衆参ねじれ」を一気に解消するためにも安倍首相の選択肢の一つと目されている。「一票の格差」の最高裁違憲判決を受け衆院定数の「0増5減」法案が国会の会期日程を調整し成立すれば、解散の条件は整う。

 過去に衆参同日選は2回ある。昭和55年6月のダブル選は、大平正芳首相による「ハプニング解散」と呼ばれた。前年の増税解散の後、翌年5月に内閣不信任案が可決されたことによる。このときは選挙中に大平首相が急死する事態も起き自民が大勝した。昭和61年7月のダブル選は中曽根康弘首相による「死んだふり解散」。このときは衆院奈良全県区で鍵田忠三郎氏が落選し、前田武志氏が初当選している。

 衆参同日選は投票率が上がる。一般的に浮動票取り込みに期待する政党に有利で、組織政党に不利といわれる。野党には不利で、過去2回とも与党が圧勝した。だから政権担当者は誘惑に駆られるのだろう。安倍首相も「夏は参院選(だけ)」と言いながらも「衆院選は適時適切に決断していく」とダブル選を否定はしていないのである。

 一方、政権の対抗軸になるかとみられた「維新」は、橋下発言で混迷を増す。民主党にいたっては昨年の衆院選大敗の総括も満足にできず、大苦戦が予想されている。県選挙区では他党の候補予定者が出そろい、前哨戦たけなわというのにまだ候補が決まらない。「不戦敗の選択肢はない」と言ってきた同県連だが、擁立の可能性は相当厳しいようだ。

 実際、擁立へ向け東奔西走しているのは前川清成県連会長だけ。ただ一人の衆院議員である馬淵澄夫氏は党幹事長代理の要職にあり、公認候補を「私に聞くのは筋違い」とつれない態度だ。元国土交通大臣の重鎮も動いている様子はない。結局、民主党は中央も地方も、運動で肝心な仲間づくりができていなかったのだろう。

 昨年12月に衆院解散、総選挙を実施してからまだ半年。1年生議員の名前さえ覚えられない中で、再度の選挙は有権者が許すまい。この危機の時代にいたずらに政治空白をつくるのは邪道である。

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