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金曜時評

小異捨て元に戻れ - 客員論説委員 小久保 忠弘

 奈良市の仲川元庸市長が、7日に開かれた自民党県連大会に出席したことが話題になった。7月に予定される市長選へ再選出馬を表明している市長は、このところ各種団体や会合にこまめに顔を出しているようだが、立場の異なる党への「あいさつ」は、熱心な支持者から、ぶれたのではないかと不満の声も聞かれる。出席を想定していなかった自民党関係者でさえ「びっくりした」というくらいだから、支持者の戸惑いも理解できよう。

 前回、平成21年の市長選で、仲川氏は次点候補(自公推薦)に約1万4000票差の7万6707票を獲得して当選した。実行力に期待するというよりも、政権交代の勢いがあった民主党推薦候補だったことが大きい。自民党以外なら誰でもいいという当時の有権者が無名の若者に一票を託したのである。

 今そのことを忘れて、当選することだけを目的に右往左往しているのだとしたら、有権者から見放されるのは必至だ。議会の民主党会派とうまくいっているのかどうか知らないが、落ち目の党派を頼むに足らずと軽視するようでは忘恩のそしりを受けよう。

 同市の土地開発公社が利用計画の不明確な土地を大量に購入し、大半が「塩漬け土地」となって放置されていた問題は、政府の「第三セクター改革推進債」を活用し、少しでも負担軽減する方向になった。公社の清算も決めた。職員の意識改革や業務改善にも取り組んでいる。行政改革で職員や議員から嫌われるのは覚悟の上ではなかったか。就任前の「負の遺産」をどれだけ処理できたか。これから中身が問われる。

 仲川市長と民主党の政策はそう違うようには見えない。前回の経緯からして早急に民主党と政策協定を結び、支持なり推薦を受けて出馬するのが妥当だろう。その上で4年間の実績を問えばいい。現在、同市長選で候補を決めかねている民主党は、もう一度仲川氏を担ぐことで県都での不戦敗を免れる。あわせて参院選にも弾みがつこうというものだ。

 今夏には大和郡山市、秋には天理市、年明け早々には生駒市と、北和4市で相次ぎ首長の任期がやって来る。財源難、少子化・人口減など難しい課題が山積するなかで、地方行政のかじ取りには並々ならぬ手腕と住民の協力が必要だ。とくに北和4市は広域行政の単位として、これまでともに手を携えまとまってきた歴史がある。今後さらに連携―統合も視野に入れた協力が必要だろう。各市長選では北和広域における役割もどう展開するのか聞きたいところだ。

 リニア中央新幹線の新駅誘致で4市綱引きなどという次元の低い話ではなく、「道州制」に対置できる広域行政の構想も示してほしい。人口減は確実にやってくる。

 行政は公平で効率的であるのが前提であり理想だが、責任者の人物も気になる。筋を通すのもその一つ。誠意のない「あいさつだけは上手な市長さん」であってはなるまい。

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