特集奈良ラーメン探検隊活動中!

金曜時評

鍵握る三条通活用 - 論説委員 寺前 伊平

 奈良市中心市街地の目抜き通り「三条通」。JR奈良駅前から春日大社「一の鳥居」までの約1260メートルのうち、「やすらぎの道」までの約482メートル間で、かつてない道路拡幅工事が進行中である。歩道部分が約2倍の16メートルになり、カラーの路面ブロックもきれいに敷かれてきた。合わせて、新規店舗や両側の歩道奥の空き地にマンションなどが建ち始めた。

 ところが、ここで考えなければならないのは、何のための拡幅工事なのかだ。観光客が増えて、沿道の飲食店や土産物店などが繁盛すれば、地域が活性化される。三条通から各商店街を通り、奈良町をはじめ名刹、古社、史跡に人を絶え間なく送り出すことでなくてはならない。

 南都経済研究所が最近行った観光意識調査では、春や秋の行楽シーズンの週末に、県民が日帰り旅行に向かう先の7割が県外であることが分かった。行き先のトップは京都府で、理由は「旅行気分が味わえる」「おいしい料理を味わえる店が多い」「観光地間の移動が便利」などを挙げた。

 一方、県内の観光関連サービスについては、「道路の交通渋滞」「飲食店の早すぎる閉店時間」「料理の種類・価格・内容」を問題視する県民からの意見が多かった。そのことを考えれば、一度でも奈良を訪れたことのある県外や外国人観光客にとっては、もっとさまざまな不満を抱えていると考えるべきだ。

 先日、奈良市内を走る路線バス内でそんな一こまを垣間見た。県外からの女性観光客が運転手に「近鉄奈良かJR奈良駅前にデパートあるの。雨なので買い物でもしながら、時間待ちしたいの」との問いかけ。運転手は気遣いながらも「無いんです」と返すと、女性は「四国の高松など地方へ行くと県庁所在地の駅前には必ず大きなデパートがありますよ」と不満気だった。

 JR奈良駅は「平城遷都1300年祭」を機に、同駅付近連続立体交差事業により一新され、名実ともに奈良市の玄関口となった。駅構内にはイオングループのスーパーもお目見えし、高齢者たちの“買い物難民”の課題は解消されつつあるように思える。

 が、女性観光客が指摘するように、デパートがない。近鉄大和西大寺駅前や近鉄新大宮駅から西へ約15分歩いた所には、イトーヨーカドーはあるが、観光客の目線からは遠い。

 確かに奈良は建物を建築する場合、埋蔵文化財の関係から事前の発掘調査が要る。高さ制限も厳しい。規制緩和を図るべきだと考えるが、従来からの伝統文化を守ること以外の観光資源を創出することが肝要である。

 「奈良は観光途上県だが、可能性は限りなくある」。岩村敬・新関西国際空港会社相談役のこの言葉から生み出すとすれば、県内外や外国からの観光客の目に止まるような、独自色あるいは国際色の濃いイベントや「美味(うま)いもん市」などの開催地として三条通を使わない手はない。

 担い手は地域や商店街の若手。三条通の新装を機会に地域おこしの観点で、JR奈良駅周辺の広い空き地に人を集め、三条通から東の観光地へと誘っていくような発想と仕掛けが絶えず必要だ。

 

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド