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金曜時評

県民の利益が第一 - 客員論説委員 小久保 忠弘

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は、夏の兵庫県知事選で維新候補を立てると表明した。「道州制に同調してもらえる首長がどうしても必要」という。道州制実現のために維新の首長を増やすことが狙いのようだ。現職の井戸敏三知事は関西広域連合発足時から連合長を務め、広域防災を担当する中心メンバーである。橋下氏の知事時代からの盟友だと思っていたが、道州制導入については手ぬるいらしい。

 例によって自分と意見を異にするものは容赦なく切り捨て、敵とみなして戦うという橋下氏の手法である。

 それにしても道州制の実現は、それほど差し迫った課題なのだろうか。まるで「攘夷決行」を声高に叫び、血刀を振り回す過激浪士のごとく、まさに“維新”の面目躍如といったところか。大河ドラマならまだしも、なぜ慌ただしく事を荒立てるのか分からない。

 道州制のメリットは、広域自治体に予算と権限を移譲し自由な政策決定とスピードを高めることで、地方行政や地域経済の活性化が期待できることだという。だが、従来の権限や枠を取り払うには個別府県の歴史的経緯や事情が異なり、住民の合意形成には時間が必要だ。国―道州―市町村の役割分担や財政の仕組みづくりなど、一朝一夕には行かない。

 橋下氏は、これまで関西広域連合に参加しない奈良県政に悪罵を投げつけ、あまつさえリニア中央新幹線の県内駅設置にも「京都を応援する」と理不尽な発言をしてきた人物だ。その独特の政治スタイルを批評するつもりはないが、県政のあれこれについて、一大阪市長に言われる筋合いはない。

 だが橋下氏は国政をも揺さぶる非凡な政治家である。油断していると、どんな手を突っ込んでこられるか分かったものではない。そのためにも広域連合はもとより、道州制についても、功罪を検証する必要がある。県民の利益と幸福増進に資するものなのかどうか。

 関西広域連合に対しては、県の姿勢ははっきりしている。屋上屋を架すことになること、余計な経費が発生すること、組織をつくらなくても実施できる事務ばかりであること、各府県が持っている権限を1カ所に移すことは分権ではなくむしろ集権であり、行政が住民から離れた機関で実施されることへの懸念があるとしていることだ。道州制についての見解は知らないが、おそらく広域連合不参加の延長線上にあるのだろう。「県庁が消える」ことなど想定すらしていないはずだ。

 道州制では、国は外交(防衛)・国家戦略などを担い、道州は広域行政や市町村の財政格差の調整を、市町村は地域に密着した行政サービスを担うとされる。しかし、もっとも気になるのが限界集落や過疎地域がますます取り残されるのではないかという懸念だ。道州制を分権時代の特効薬のように言う人があるが、劇薬は副作用も大きいことを忘れてはならない。

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