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金曜時評

細かに早く見直せ - 編集委員 水村 勤

 奈良観光の中心となる商業地で“地盤沈下”が続く。昨年末から新春にかけて古都奈良をにぎわしたニュースのうち、気になるのは猿沢池の近くにあった老舗旅館「魚佐旅館」の閉館と、イオンリテールの商業施設「奈良ビブレ」閉店である。

四半世紀ほど前に奈良公園などで開催した「奈良・シルクロード博」、平成11年から毎年夏のイベントとして親しまれる「なら燈花会」、3年前の「平城遷都1300年祭」など、奈良の魅力を引き出すビッグイベントの果してきた役割は大きかったが、残念ながらホテル、旅館など宿泊施設の拡大は思うにまかせないでいる。奈良公園をロケーションとする優位な条件を持ちながら、中小の旅館は減る傾向にある。

 一番の大きな理由は、老朽化した施設を建て替えしようとしても、十分な客室数を確保し、さらにはレストラン、フィットネスといった魅力度を上げる施設を整え、規模拡大を図ることが難しいのだ。条件を阻む理由は、はっきりとしている。市の条例で高さ制限の見直しが進まないからだ。奈良商工会議所の西口広宗会頭が毎年のように、本紙の新春座談会などで建物の高さ制限の緩和を呼び掛けても、まったく変わらないのである。

 中心市街地では何が進んでいるのか。伝統的な町家の取り壊しと駐車場の増加である。大型施設の閉鎖も十分な容積率が確保できないために、規模の拡大によって可能な大型商業施設の立地につながらない。ダイエー奈良店、奈良ビブレ、魚佐旅館、無印良品の閉店という事態に、鈍感であってはならない。

 ミニ開発の中には、瓦ぶきの店舗を造り奈良らしいたたずまいが生まれることもあるが、雑多な飲食店の看板が幅を効かせ、次第に商店街の奈良らしさが弱まりつつある。一方で、通りを外れた所で自宅をゲストハウスにして低価格で観光客が利用できる宿泊施設がぽつぽつとできているのは、奈良ファンを増やす意義のある動きだ。

 しかし、古都奈良が多くの観光客を受け入れるためには、中心市街地に住む住民や事業者の主体的な営みが重要な一方で、活性化の起爆剤となり得る、めりはりのある規制緩和を一部のエリアで進めることも、大切な行政課題であることを忘れてはならない。

 やすらぎの道のうち、近鉄奈良駅がある高天交差点より以南などは、現在20メートルの高さ規制を30~40メートルに緩和し大型ホテルなどの商業施設の立地を誘導すれば、中心市街地の一角は県都にふさわしい商業ゾーンとして変ぼうする可能性が出てくる。

 今回、奈良ビブレ跡地に高級ホテル誘致を進めていた不動産業の浅川哲弥氏は「すべての規制緩和を求めているのではない。『奈良市全体の見直しが必要』などと言って規制緩和の細かい作業を怠る。日一日と中心市街地が生産性を喪失している。その危機感がないことが問題」と語る。耳を傾けるべき言葉と思う。

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