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金曜時評

挑戦を怠れば衰退 - 編集委員 水村 勤

 日本銀行が2カ月連続の金融緩和に踏み切った。さらに政府と連名でデフレ脱却に向けて必要な政策対応を共同文書として発表した。まさに異例だ。予算の執行がままならない民主党政権の尻拭いを日銀が一手に引き受けているような印象だ。

それだけ経済状況が悪い。パナソニックやシャープなど、日本を代表するような大企業の大幅な業績悪化が相次いでいる。関係する中小企業への影響も憂慮される。直近の経済指標も経済の後退を裏付けるものばかりだ。日中関係悪化などの影響による輸出や生産の後退、国内消費の低迷が続く。これまで堅調だった有効求人倍率も9月分が全国・県内ともに後退した。製造業の不振が大きく「悪化の局面」と心配する見方も出てきた。

 いま、赤字国債の発行を認める公債発行特例法案が成立しないため、本年度国家予算の執行がジリ貧状態になっている。本来9月に配分する地方交付税は3分割して支給された。このため、程度の差こそあれ、35道府県が金融機関に一時借り入れなど緊急の資金調達が強いられたという。

 幸い、本県はそこまでいっていないようだが、12月上旬には年末ボーナスの支給など資金需要が膨らむ。特例法案の成立が遅れれば、利子負担など余分な財政支出が増えることになる。自民党の安部晋三総裁は審議に応じる意向を表明したが、政局をめぐる駆け引きは、政治の生産性の悪さや国民生活の足を引っ張る想像力の欠如にあきれるほかない。

 一方で「第3極」を指向する新党の動きもあるが、政局を巻き込む動きにまでなるのか。注視する必要はあるが、判然としない。

 野田佳彦首相は特例公債法案や衆院の定数是正の実現などに加え、経済対策の実施を課題に掲げるのに対し、自民、公明両党を中心に野党は年内解散を求める動きを強めている。「延命」とか「解散先送り」といった批判に対して、これに応えるようなメッセージがない。民主党政権は守りに入っているとしかみられない。

 憂慮すべきは、目下の経済失速であるが、それ以上に国力の衰えへの危機意識が与野党ともに足りないと言わざるを得ない。解散時期を先送りして議論がかみ合わないのであれば、野田首相がさらに胸襟を開き、踏み込んだ話し合いを行うべきだ。

 奈良工業会の近東宏光会長(共同精版社長)は「どの企業も空前の円高に耐え、合理化によるコストダウンに必死だ。また厳しい経営環境に適応するべく、顧客ニーズに対応した変化にチャレンジしている」と語る。企業が守りに入り、変化への挑戦を怠れば、衰退しかないとも言うのだ。政治家は経済人に、企業に、教訓を得なければならない。

 「政治不況にするな」という声もある。与野党が「解散時期」を前提に最低限一致できる課題をまとめて、スピーディーに次の舞台へ進まないと、衰退を覚悟せざるを得ない。

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