金曜時評
権力監視こそ使命 - 主筆 甘利 治夫
週明けにも臨時国会が招集されるが、解散含みの波乱が予想される。国民を置いてきぼりにした各党の思惑が見え隠れしており、どんな建前を語ったとしても党利党略の政局といわざるをえない。
発足してわずか1年の野田佳彦首相は、第3次改造内閣という、安定感のなさを見せている。しかも新法相の田中慶秋氏の外国人献金問題や暴力団関係者との交際が発覚して事実上更迭され、前法相の滝実氏の再登板となった。引退を表明し、後継候補が決まった滝氏にしてみれば、複雑な思いだろう。
8月の民主、自民、公明の3党党首会談で、野田首相は「近いうち」に信を問うと約束した。その約束があいまいで不透明なために、各党や立候補予定者も走り出しており、もはや選挙モードといえる状況だ。
赤字国債発行を認める特別公債法案と衆院選の格差是正、そして社会保障制度改革国民会議の設置という懸案を、どう処理していくのか。野田首相が野党に理解を求めようとするなら、「約束」という解散必至の情勢のなかで、与党・民主党がどう譲歩していくかにある。駆け引きではなく、国民の視点を忘れてはなるまい。
来たるべき総選挙に向けた動きが、新党を含め県内でも日ごとに高まっていく。パフォーマンスや聞き心地のよい言葉など表面的なことに躍らされるのではなく、国民目線で一つ一つの事象を追いかけていかねばなるまい。国民の現状への不満ををみれば、メディアの責任は大きいといえる。
今年の新聞週間(15日から1週間)に合わせて、先週、青森市で新聞大会が開かれた。全国紙や地方紙など、本紙をはじめ全国の新聞人が集まって、「新聞の今」を語った。誰もが発信することができるネット時代のなかで、信頼できる情報が何なのか。やはり最も信頼度の高い新聞であり、その使命、役割を再確認してきた。
奇(く)しくも、きょう26日は昭和21(1946)年に本紙の前身となる「大和タイムス」が創刊した日でもある。「奈良県の地方紙の灯を守ろう」という、先人や熱き思いの県民、読者に育てていただき66年を迎えた。あらためて感謝したい。
創刊号で「奈良県の進歩発展と社会正義のためには公正にして大胆な主張をしてゆくつもりであります」と約束し、その精神は、今日まで脈々と受け継がれている。国会議員をはじめとした政治家や公権力に対する不祥事の追及は、「政治改革報道」として展開してきたところだ。
新聞大会で今年の新聞協会賞の表彰があったが、そのなかで「東電女性社員殺害事件の再審請求審のDNA鑑定結果を巡る一連のスクープ」(読売)は、冤罪(えんざい)を晴らす糸口となったものだ。司法権力に対峙(たいじ)した姿勢は、まさに言論機関のあるべき姿でもある。
わが奈良新聞も、県民の怒りを怒りとし、県民とともに泣き、県民とともに笑い、県民とともに喜ぶ―その創刊の原点を忘れない。創刊精神を堅持し、公人への監視を忘れず、権力の横暴に目を光らせていく。本紙の創刊記念日にあらためて読者にお誓いする。
発足してわずか1年の野田佳彦首相は、第3次改造内閣という、安定感のなさを見せている。しかも新法相の田中慶秋氏の外国人献金問題や暴力団関係者との交際が発覚して事実上更迭され、前法相の滝実氏の再登板となった。引退を表明し、後継候補が決まった滝氏にしてみれば、複雑な思いだろう。
8月の民主、自民、公明の3党党首会談で、野田首相は「近いうち」に信を問うと約束した。その約束があいまいで不透明なために、各党や立候補予定者も走り出しており、もはや選挙モードといえる状況だ。
赤字国債発行を認める特別公債法案と衆院選の格差是正、そして社会保障制度改革国民会議の設置という懸案を、どう処理していくのか。野田首相が野党に理解を求めようとするなら、「約束」という解散必至の情勢のなかで、与党・民主党がどう譲歩していくかにある。駆け引きではなく、国民の視点を忘れてはなるまい。
来たるべき総選挙に向けた動きが、新党を含め県内でも日ごとに高まっていく。パフォーマンスや聞き心地のよい言葉など表面的なことに躍らされるのではなく、国民目線で一つ一つの事象を追いかけていかねばなるまい。国民の現状への不満ををみれば、メディアの責任は大きいといえる。
今年の新聞週間(15日から1週間)に合わせて、先週、青森市で新聞大会が開かれた。全国紙や地方紙など、本紙をはじめ全国の新聞人が集まって、「新聞の今」を語った。誰もが発信することができるネット時代のなかで、信頼できる情報が何なのか。やはり最も信頼度の高い新聞であり、その使命、役割を再確認してきた。
奇(く)しくも、きょう26日は昭和21(1946)年に本紙の前身となる「大和タイムス」が創刊した日でもある。「奈良県の地方紙の灯を守ろう」という、先人や熱き思いの県民、読者に育てていただき66年を迎えた。あらためて感謝したい。
創刊号で「奈良県の進歩発展と社会正義のためには公正にして大胆な主張をしてゆくつもりであります」と約束し、その精神は、今日まで脈々と受け継がれている。国会議員をはじめとした政治家や公権力に対する不祥事の追及は、「政治改革報道」として展開してきたところだ。
新聞大会で今年の新聞協会賞の表彰があったが、そのなかで「東電女性社員殺害事件の再審請求審のDNA鑑定結果を巡る一連のスクープ」(読売)は、冤罪(えんざい)を晴らす糸口となったものだ。司法権力に対峙(たいじ)した姿勢は、まさに言論機関のあるべき姿でもある。
わが奈良新聞も、県民の怒りを怒りとし、県民とともに泣き、県民とともに笑い、県民とともに喜ぶ―その創刊の原点を忘れない。創刊精神を堅持し、公人への監視を忘れず、権力の横暴に目を光らせていく。本紙の創刊記念日にあらためて読者にお誓いする。