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金曜時評

ともに政治を前へ - 論説委員 寺前伊平

 民主党と自民党の既成2大政党が、そろって党首選を展開中である。そのうち民主党代表選はきょう投開票され、新代表が決定する。自民党は5日後の26日に谷垣禎一現総裁に代わる新総裁の顔が決まる。両党首は就任後、臨時国会に臨むこととなるが、社会保障と税の一体改革に関する、公明党を含む3党間の合意が速やかに機能していくための最大で最善の努力を払っていくべきである。

 民主党代表選は野田佳彦首相の再選が濃厚となる中、尖閣諸島をめぐる中国との摩擦が深刻化している。代表選前、野田首相が「決められない政治からの脱却」を旗印に、不退転の決意で尖閣諸島を所有者から国が買い取ることを決めた矢先、中国でのデモ、暴動が拡大した。

 県選出の中村哲治参院議員ら、これまで70人以上の国会議員が民主党を離党。元代表の小沢一郎衆院議員率いる新党「国民の生活が第一」や橋下徹大阪市長率いる新党「日本維新の会」に合流するなど、内政の基盤自体が急速に揺るぎ始めた。3党合意を取り付けたものの、予想以上に影響は大きかった。

 中国内での反日デモ、暴動に対しては、火のついたところに油を注ぐわけにもいかず、冷静さを保つのがやっと。中国に足元を見透かされているようにさえ映る。そんな野田政権の弱腰外交を直視した自民党総裁選の5人の候補者は、いずれも中国をけん制、毅然とした態度でのぞむことを街頭で訴える。

 日本の安全保障、国土、領海の守りに必要な措置は誰もが望むところである。憲法解釈が分かれる「集団的自衛権」について、両党首選を通し、これほどまでに国民の関心を集めたこともない。自民党の5候補はともに、たとえばアメリカが武力攻撃を受けた場合、同盟国である日本が他の友好国・同盟国と共同して防衛にあたる権利を認めるべきだ、という考えを示した。

 防衛論をひっさげての自民党総裁選だが、一方で、5候補とも先の3党合意を尊重する立場は堅持している。新総裁が誰に決まろうとも、次期政権を担う度量が試されていることを肝に銘じ、野党第1党として政治を前に推し進める最大の努力を払うべきだろう。

 そういう意味では、与党民主党はまず自民、公明両党と歩調を合わせ、3党合意を実効性あるものとしていく責務を担う。その上で、衆院選挙制度改正法案やマイナンバー法案など延長国会で審議できなかった数々の法案について、今後どう審議入りできるのかなど等、道筋をしっかりと構築していくことが必要となる。

 国政基盤がぐらついてきたところを、特に経済面で急成長している中国、韓国は見逃さない。東アジアの国々に毅然とした態度をとるには、わが国のリーダーシップを待つしかない。野田首相の「近いうち解散」により、次期衆院選挙へ向けての臨戦態勢に入ることは致し方ないにしろ、特に新しい民主、自民両党首はもちろん、両党の国会議員は腹をくくって国政に臨んでもらいたい。

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