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金曜時評

粘り強く現場主義 - 編集委員 水村 勤

 民主、自民両党はいま、次期衆院総選挙の“顔”となる党首選びの真っ最中である。民主党代表選は既に告示され、きょう14日は自民党総裁選が始まる。さらに橋下徹大阪市長が代表の地域政党「大阪維新の会」は新たに国政を目指す「日本維新の会」を創設。この3党の動きが目下、政局最大の関心事となっている。

だが、政策が論じられるにしても「選挙をするには誰が有利か」といった人物論にばかり論点が偏っていくのはどうかと思う。先の国会で消費税増税法は成立させながら予算執行の“足”を縛る公債特例法案が審議もせずに廃案となったことに筆者はこだわる。法成立の必要性、緊急性を認めながら、全く努力が国会内には見当たらなかった。もう一つ、衆院の定数是正法案も置き去りにした。このままでは次期総選挙は最高裁の指摘する違憲状態で行うことになる。「国会の怠慢」という不名誉をどう挽回するのか。

 首相選びにつながる政局は、政治家にとって一大事であろう。しかし、国民生活への影響や国民への信頼回復も、政局と同じように政治家にとって一大事なのではないか。むしろ政治家を志す初心は、後者にあるのではないか。政治の停滞に真剣に応えてほしい。

 さて、地域においても政治の実行が進まない。奈良市では老朽化したごみ焼却場と斎場の移転先が決まらない。特に斎場は奈良市の市街地に近いドリームランド跡地の立地について、仲川元庸奈良市長が3月市議会予算特別委員会で検討していることを公表しながら、今月には地元の理解を得られないからと、わずか半年余りで断念したことを市議会本会議で報告した。以前から懸念していたが、全くもって何をかいわんやである。

 仲川市長は地元理解を得る作業を担当部局任せで自ら足を運ぶ労を惜しんだようだ。公園墓地構想は魅力あるものだが、その内容もほとんど市民に知られていない。市議の中には「手法があまりにも幼稚」という批判も。

 こんなことが多いから、現場主義で問題の矢面に立つ強いリーダーを求めたくなる。筆者の脳裏に浮かぶのは二宮尊徳だ。幕末期、貧困に苦しむ農民の実情を調べ上げ、暮らしと生産を立て直す算段を示し、叱咤(しった)激励して多くの農村を成功に導いた。薪を背負い歩きながら本を読む「勤倹貯蓄」の二宮金次郎というよりは、生産拡大が見込めれば融資を積極的に行い、農民のやる気を引き出して農村を豊かにしてきた大人の尊徳だ。

 こんなリーダーが奈良に限らず、日本社会のあちこちに出てきてほしい。今夕、日本道経会奈良支部が尊徳7代目の子孫、中桐万里子さんの講演会を橿原で開く。同支部代表の吉川卓伸氏は「尊徳のDNAを受け継ぐ中桐さんの話を通じ、自分なりに追体験することで経営者としての力量を高めたい」と話す。

 現場に足を運んでこそ、難問解決のヒントも見つけられるし、立場を越えて相互の人間理解も深まるのだ。

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