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金曜時評

許せぬ国政流動化 - 主筆 甘利 治夫

 野田佳彦首相に対する問責決議案が、参院で自民党を含む野党の賛成多数で可決した。野党は衆院の解散・総選挙を求めているが、法的拘束力がないため、野田首相に応じる考えはない。国会は会期末まで空転を続けることになり、衆院選挙制度改革や公債発行特例法案などの重要法案は廃案となり、「事実上の閉会」といえる。またしても国民を置き去りにした事態だ。

 民主、自民、公明の3党が消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法で合意してきただけに、問責決議に賛成した自民党の対応は問題だ。県内の党員や党所属議員からも批判の声が上がっている。民主党を離党した小沢一郎元代表率いる新党「国民の生活が第一」など中小野党7党が提出した問責理由は、この3党合意を批判した内容だ。これに賛成したのだから、自民党は自己否定の形となった。

 思えば3年前のきのう30日は、衆院選で民主党が圧勝した。あの「政権交代」の大合唱が全国を席巻、奈良選挙区でも旋風となり、民主党は308議席を獲得する、まさに天下取りの記念の日でもあった。同じく1年前は、前日に党代表に選ばれた野田氏が首相に指名された日でもある。

 そんな「政権交代」を託した国民の期待に、民主党はどう応えてきたか。

 わずか3年の間に鳩山由紀夫、菅直人、そして野田の各氏が首相の座に着いた。野党時代に自民党政権を批判してきたそのままに、首相が3人も代わった。鳩山氏や菅氏の退陣劇は国民の支持を失いボロボロだった。今度の野田首相も支持率が下がり、問責決議も可決された。何とも情けないものだ。

 国民の厳しい目がありながら、政権党の民主、そして政権奪還を目指す自民の二大政党は、9月の党首選に向けて走り始めている。両党の党首選は、まさに国のリーダー選びに直結している。責任政党である両党が、また浮足だった姿を国民にさらすことになるのか。

 いずれにしても参院の問責決議は重い。速やかな解散、総選挙が求められて当然だ。誰が党首になっても、民意を問うべき時だ。国民の我慢も限界にきている。

 そこで新党「国民の生活が第一」の消長とともに、大阪市の橋下徹市長の「大阪維新の会」の動きを注目せざるを得ない。「維新」は政党要件を満たすことと、衆院選に向けた候補者選び、政策立案を加速させている。9月中には形もできるのではないか。橋下氏の発信力は、各党の脅威でもあり、総選挙では大量の当選者が予想されている。

 過去2回の総選挙で「小泉チルドレン」や「小沢チルドレン」などといった、新人議員が多数当選したが、橋下新党にも、そんな不安がつきまとっている。奈良の選挙区でも、「維新」の擁立が取り沙汰されている。

 この国の今と未来をどうするか。この数年の経験で有権者も学んだはずだ。不安定な政治をいつまでも続けるわけにはいかない。きっちりとした審判を下したい。

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