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金曜時評

大事な地方の視線 - 編集委員 北岡 和之

 私たちが決して忘れてはならない「8・15」は今年、特別な思いを込めて記憶にとどめねばならなくなった。中国や韓国などによる、わが国の領土に対する唐突な動きなどへの深い戸惑いと不快感とともにである。

 まず10日、韓国の李明博大統領が突然、島根県・竹島に上陸した。次期大統領選を控えて支持率低下を指摘されたことが気になるのか、狙いがよく分からない。私たちは静かに対応するとして、要は自国に向けたパフォーマンス以上のものではないように見える。

 韓国の一般市民の冷静な反応も報じられており、深刻な事態には至らないのでは。ただ、韓国のトップが動いたことには、強い懸念を覚える。さらに、天皇陛下の訪韓に絡んで謝罪を求めた発言にはあ然としたし、極めて礼を失していると言わざるを得ない。一方で、その後、15日のソウルでの「光復節」記念式典における演説で「日本は近い隣国であり、体系的価値を共有する友邦であり、未来をともに切り開くべき重要な同伴者」などと述べていることには注目したい。

 この演説で触れられた旧日本軍の従軍慰安婦問題について、わが国に「責任ある措置」を取るよう求めた点に関しては、それこそ慎重に、冷静に向き合いたい。

 そしてもう一方の中国。香港の団体の船が沖縄県・尖閣諸島へ向かい、海上保安庁の巡視船による警告を無視して魚釣島に上陸した。沖縄県警と第11管区海上保安本部は関係者を入管難民法違反容疑で14人を逮捕したが、「法令にのっとり厳正に対処していく」(野田佳彦首相)の言葉通り、逮捕自体は適切な対応だったと思う。これ以上は、政府間のかじ取りのレベルで、一般市民からは「自由な意見」として表明できるだけだ。

 市民レベルの視線で言うならば、現在は経済・社会の次元では国境を越えた国際交流の時代に入っている。日中韓の3国だけで見ても、経済や文化をはじめ、さまざまな分野で交流を深めている。身近なところではつい先日、わが県の荒井正吾知事が力を入れている東アジア地方政府交流の一環で「東アジア・サマースクール」が行われた。わが国と中国、韓国、ベトナムの参加者が講演を聞き、視察し、体験学習もして相互理解を深めた。

 市民レベルの空想を言わせてもらえば、竹島も尖閣諸島も領有権を主張する国や地域の共有の場とし、ルールをきちんと決めて活用してはどうか。竹島なら島根県、尖閣諸島なら沖縄県だから、相手国・地域の方も所属の地方政府から代表を出し合って協議してはどうか。国家意識の内部では「わが国の領土」という思いがあると言っても、現実的には、例えば奈良県の市民と竹島や尖閣諸島がどう結びつくのか不明だ。原発問題でも同様で、大飯原発との“距離感”は地元の福井県と奈良県とでは異なる。このことは実感された。

 竹島と尖閣諸島をめぐる問題も、一度地方レベルから考える課題としてはどうか。

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