特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

政治改革の一歩か - 編集委員 北岡 和之

 民主党が分裂した。消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連8法案のうち、消費税増税法案の衆院本会議における採決で同党の57人が反対。小沢一郎元代表を支持するグループは集団離党し、11日には新党の設立総会を開くという。政治の世界はにわかに重大な局面を迎える展開となった。

 県関係では、中村哲治参院議員(県選挙区)が小沢グループの一員として離党届を提出。これまで中村氏を応援してきた県民の反発も小さくはないようだ。

 断片的に伝わってくる情報から、私たちは何をどう判断すればいいのか戸惑う。小沢氏や中村氏らの党執行部批判は国民との約束違反とか党内論議の進め方などが中心で、消費税そのものに切り込んでおらず、どのように見方が違うのかが判然としない。

 県民・有権者の判断材料の一つにしていいと思えるのは、6月28日付の奈良新聞に掲載された共同通信社による全国電話世論調査結果。この記事に興味深いデータがある。

 まず、小沢氏らが消費税増税法案採決で反対票を投じたことについて、59・8%が「理解できない」と答えたという点。また小沢氏らが新党結成に至ったとしても79・6%が「期待しない」と答えたという点。

 約6割の人はなぜ、消費税増税法案への反対を「理解できない」としたのか。単に自民、公明両党も賛成しているのに、という理由からではないはずだ。たびたび引用していて恐縮だが、小沢氏の原点というべき著書「日本改造計画」(平成5年出版)で「今世紀(20世紀)中に(税の)直間比率を是正することは避けて通れない課題」「現在三パーセントである消費税の税率を、欧州諸国と米国の中間の一〇パーセントとする」などと書いた。問題は、小沢氏の当時の考えは現在の状況ではあてはめられないとしていいかどうかだ。

 少し古い数字(平成17年)だが、県のホームページによると、県民の就業者割合は第1次産業3・21%、第2次産業25・33%、第3次産業69・55%となっている。全国的にみても同様だろう。この数字が示しているのは、高度な消費社会の段階に突入しているという現実であり、であれば消費税の直間比率の是正(消費税増税)は小沢氏の著書にもあるように「避けて通れない課題」ということではないか。生活の苦しさを実感しつつも国民の多くが消費税に理解を示すのはなぜか。

 もう一つ、小沢氏らの新党結成に「期待しない」人が約8割にも上っているのはなぜだろうか。小沢氏の著書には「政治改革によって首相のリーダーシップを強化するとき、ポイントとなるのは、与党と内閣の一体化なのである」とある。これは正論と思える。だが小沢氏や中村氏らは逆の道を進もうとしているように見えるのかもしれない。

 ただ、小沢氏らの行動は「政治改革の道半ば」という状況を浮き彫りにした。全ての政党、政治集団の存在意義を国民が問う。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド