特集奈良ラーメン探検隊活動中!

金曜時評

不祥事の根を断て - 編集委員 松井 重宏

 昨年の9月以降、ここ半年余りで5度も警察の家宅捜索を受けた奈良市役所。次々に新たな事件が発覚、前議長や幹部職員の逮捕が続き、行政の信頼回復へ、市や市議会は待ったなしの厳しい局面を迎えている。

 そうした中、仲川元庸市長がきのう、ようやく記者会見で市民に陳謝、頭を下げた。併せて全職員を対象に、不祥事につながる問題点を報告させるアンケート実施を発表。「うみを出し切り、不祥事が起きない体制を確立する」と再発防止へ意欲を示した。ただアンケートが内部告発の風土づくりを狙ったものなのか、職員の自覚と資質の向上につながるかどうかは不透明。大阪市の橋下徹市長を連想させる今回の手法が成果を挙げるには、まず仲川市長自身の姿勢次第となりそうだ。

 なにしろ管理職2人が市税の延滞金を着服していた事件では、この2人とは会食するなど職員の中でも「よく知る人物」だったと説明、わきの甘さを露呈した仲川市長。このときは「裏切られた思い」とほぞをかんで見せたが、一方で事件の発覚から会見まで日を置いたことから対応が鈍いと批判が噴出。にもかかわらず、今回の市保健所・教育総合センター建設工事にからむ詐欺事件では、職員の逮捕から会見まで2週間も遅れた。この間には市議会から、謝罪コメントだけ済ませている同市長に「姿が見えない。トップ自ら対処を」と求める声も上がっていた。

 言いつくろうための善後策が用意できるまで待っていたのなら、市民感情からかけ離れた姿勢と言うほかない。

 これと似たような体質は市議会からも感じ取れる。議長選をめぐる贈賄事件は、組織的な工作が強く疑われ、市民から真相解明のための調査特別委員会(百条委)設置を求める請願書が提出されたが、一向に具体化の動きがない。議長選に立候補制を取り入れたり、市民アンケートを実施するなど議会改革を進めるのは良いが、事件の根を残したまま、対処療法的な対応に終始するのは、再発防止にならないだけでなく、本質隠しとも受け取られかねない。

 目前に迫った6月議会で行われる議長選では、新たに導入される立候補制により、候補者が所信を表明することで議会改革が進むと期待する意見も聞かれたが、問題をあいまいにせず、百条委設置を公約に立つ候補の登場、当選を望みたい。

 地方分権の推進に沿って、県内最大の自治体としての役割と責任を担って平成14年に中核市へ“昇格”した奈良市。この春、指定から10周年を迎え、権限移譲の象徴ともいえる市保健所の新施設がなんとか完成したと思ったら、そこが不正の温床になっていたというのは皮肉な話だ。

 中核市にふさわしい市政の確立へ。市議会も市長、職員も逃げない、ごまかさない取り組みを示すことが、市民の信頼を回復するための唯一の道になる。

 

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド