注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

積極策で新時代を - 編集委員 松井 重宏

 県による新しいスポーツ振興計画づくりがスタートした。専門家ら15人で構成する審議会が今月9日に発足。ここで1年間にわたって討議を重ねた上で県が計画内容を決定、来年4月1日の施行を目指す。第1回の審議会では、荒井正吾知事が「奈良スポーツ新時代を築く」とあいさつ。その意気込みに期待が膨らむ。

 国のスポーツ振興法に基づいて策定される同計画では、これまでにも平成17年に「県スポーツ振興計画」、同21年にはその改訂版となる「なら運動・スポーツ振興プラン」が立案され、各種の事業が進められてきた。今回は計画の基本目標として「だれもが、いつでも、どこでも運動・スポーツに親しめる環境づくり」を掲げており、拠点となる施設の整備や駅前、商店街でスポーツに取り組める環境づくりも盛り込むという。

 この間、ハード整備ではフットボールセンターの設置助成、既存施設の改修などが行われてきたが、今も昭和59年に開かれた「わかくさ国体」の遺産に負うところが大きく、時代に合った施設充実が求められる。もちろん予算面の制約はあるが、スポーツクラブなど民間と公営施設の役割分担、大型と小型の分別、統廃合など、めりはりを明確化することで進む環境整備も多いに違いない。

 また前回の計画改定では、子どもの運動不足や成人の生活習慣病の改善、高齢者の介護予防など健康に対する県民の関心が高まっていることから、特に健康増進のための「運動」に力点を置いた計画が立てられたが、今回はスポーツイベントと観光産業の連携、プロスポーツの育成などにも取り組むとしているのが目新しい。

 県内ではサッカーの奈良クラブがJリーグ昇格を目指しているほか、プロ野球の関西独立リーグに橿原市の佐藤薬品スタジアムを拠点とする大和侍レッズが加入。プロスポーツを気軽に常時観戦できるようになれば、県民の“スポーツ熱”を高める効果は大きい。

 レクリエーションスポーツなど福祉や保健と連動した施策に偏らず、行政がプロチームやトップ選手を積極的に支援すれば「奈良スポーツ新時代」につながるだろう。それは天皇杯獲得を目指し、見事なしとげた「わかくさ国体」の成果と同じ。頂点を狙う選手たちが身近にいて、本物に触れる機会を持つことで後に続く選手が育ち、一般のスポーツに親しむ裾野も広がる。

 経済活動とスポーツの連動も、これから行政が関わっていくべき分野。高望みをしすぎてもいけないが、県の審議会にはアウトドア用品のモンベル会長やアシックス役員、また五輪メダリストの朝原宣治さんらも加わっており、有意義な議論が期待できそうだ。優れた選手や指導者を県内で育て、呼び込むための施策、また全国大会、国際大会を誘致できるようなハード整備など、予算面でも良い知恵が出てくるだろうか。

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