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金曜時評

ほど遠い全容解明 - 編集委員 北岡 和之

 昨年6月の奈良市議会議長選をめぐる投票工作問題は、無所属議員に米5年分や現金20万円を渡す見返りに白票を投じるよう持ち掛けたとして、山本清・前議長(議員辞職)が贈賄申し込みの罪で大阪地検から起訴されたことで、新たな段階に入った。

 前議長の逮捕後、起訴されないのではないかとの観測も流れていただけに、大阪地検が捜査を継続するとの見方が強まった。捜査の障害になってはいけないが、本紙も当然ながら情報収集に取り組んでいる。

 今後どのような展開になってゆくのか予断を許さないが、本紙が繰り返して主張してきたように、議長選挙という政治的活動である限り、どう考えても前議長の“単独犯”説は採用し難い。前議長同様の贈賄申し込み疑惑が他にも浮上していただけでなく、前議長周辺の「関与」抜きにしては、今回の事件そのものがあり得なかったと思えるからだ。

 事件を告発した天野秀治議員が会見で話したように「まだまだ全容解明にはほど遠い」のであり、市民・県民への責任をきちんと果たすまで、全容解明への道は続く。

 その責任を真っ先に果たすべきは当然ながら、前議長が所属していた市議会の会派「政翔会」である。先の議長選では、会派のヘゲモニーを握るべく行動しただろうし、小さな地方議会の事とはいえ、当時はこの“権力闘争”に全力を挙げて取り組んでいたはずだ。それが政治集団の自然な姿であり、そうした活動自体を批判しているわけではない。

 ところが、前議長が逮捕された1月20日以降、政翔会の幹事長を務める浅川仁議員は全く報道陣の前に姿を現さなくなった。浅川氏が市議会に現れたのは、3週間ぶりの今月10日。会見では、自らが「雲隠れ」と報じられたことを否定し、会派の「関与」を否定し、捜査の内容は話せないとした。

 浅川氏の言い分を検証する前に、唐突に報じられたのが政翔会に所属する松田末作議員の会派離脱届の提出。会派のほころびを垣間見せた瞬間だった。松田氏は「当時、浅川幹事長から言われて副議長候補になった。会派の幹部らが勝手に物事を決めていた」などと語っている。ここには、この会派の水準がどの程度かを推測させるものがあるとともに、議員としての主体性を疑わせる発言内容でもあり、一見、この会派全体の「関与」はなかったのではないかと思わせられる。

 しかし、この松田氏の発言を言葉通り受け止められるかどうか。議長選の当時の発言と行動が正確に再現されるべきだ。

 全容解明のキーマンはやはり浅川氏だ。松田氏が「浅川幹事長から言われて副議長候補になった」と言っているからだけではない。議長選前日の昨年6月23日夜に行われたという、浅川氏ら4議員による他会派議員2人への訪問。その場でやり取りされた内容が明かされることが全容解明の一歩。会派の幹事長として、浅川氏の発言がますます注目される。

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