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金曜時評

住民の思いを語れ - 編集委員 北岡 和之

 台風12号豪雨災害で、被災地復興に向けた動きを象徴するのは、1日から2カ月ぶりに運行が再開された奈良交通の「八木新宮特急バス」。橿原市から和歌山県新宮市まで約167キロも走る「日本一長い」路線バスだ。この路線を通るのが国道168号で、今回の災害復旧・復興対策において、奈良、和歌山、三重3県は共同提案「紀伊半島アンカールートの早期確保」における主軸「五條新宮道路」として位置付けた。提案は、この道路を国直轄指定区間に編入すべきだとしている。

 さまざまな分野にわたる復旧・復興対策のうち、注目したいのはやはり「災害に強い紀伊半島づくりに必要な広域幹線道路の整備促進」(3県共同提案から)だ。「紀伊半島を一周する高速道路である近畿自動車道紀勢線の早期整備」「京奈和自動車道の早期供用」「五條新宮道路を国直轄指定区間に編入」「国道169号の直轄権限代行による早期整備」(同)はぜひ実現してほしい。

 3県共同提案が示された、国と3県合同対策会議(10月31日、大阪市で開催)の資料を読んでいて目に付いたことがもう一つ。

 農業被害に関する3県のデータで、農業被害額について奈良7億2600万円、和歌山170億5100万円、三重59億7200万円となっている。もう少し詳しく見ると、農業用施設=奈良1億8400万円、和歌山69億3700万円、三重20億5600万円▽農地=奈良4億1400万円、和歌山71億8400万円、三重15億7700万円▽農業生産施設=奈良3800万円、和歌山10億8800万円、三重13億500万円|とある。

 もちろん、奈良の被害は少なくて和歌山、三重に大きな被害が出たと単純に比較したいわけではない。数字からうかがえるのは、わが県の南部における農業の規模はそもそも小さいという構造的な特徴だ。

 国道168号沿いの被災地である五條市と十津川村について、別の角度からデータを見てみる。産業別就業構造の数字(平成17年の国勢調査から)で、五條市は第1次産業=15・23%、第2次産業=26・93%、第3次産業=56・86%。一方の十津川村は第1次産業=6・7%、第2次産業=21・49%、第3次産業=71・11%となっている。県平均は3・21%、25・33%、69・55%。

 吉野郡や宇陀郡の全域を含めて詳しく見ていけばいいのだが、その特徴は分かる。特に第1次産業の数字に表れている五條市と十津川村の違いに注目したい。

 歴史的背景や地勢などたくさんの要素が複雑に絡み合って、まちは織り上げられている。ここに挙げた農業被害額と産業別就業構造の一端からも見える地域の成り立ち・特色を把握し、紀伊半島のグランドデザインを描きたい。将来の展望に向けて「どのようなまち、地域にしていくのか」が大事で、これは国や県に示してもらうのではなく、そこに暮らす住民がまず自ら考えて語りだすことだ。

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