特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

政治とカネ脱却を - 編集委員 辻 恵介

 先ごろ、資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる事件で、政治資金規正法違反の罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告の初公判があった。「証拠もないのに特定の政治家を狙った国家権力の乱用」といった強気の発言は相変わらずだった。

しかし、その夜、激しい腰の痛みを訴えて緊急入院、診断結果は「尿管結石」だった。石の位置によって脇腹痛であったり腰痛であったりするが、患者になるまで誰もそんな病気があるとは知らないことが多い。病院に運ばれても激痛が止まらず、複数の看護師さんらに腕や体をベッドに押さえつけられても、もがき苦しみ、注射(鎮痛剤)が効くまで七転八倒の痛みが続く。過去2回も発病した経験のある筆者には、痛みにのた打ち回ったであろう小沢氏の姿が目に浮かぶ。心から御同情申し上げる。

 思えば検察審査会の議決は大物政治家にとって、当初は小さな小さな“石”であっただろう。だが、次第に大きくなり、その政治家の運命を、政界の流れを変えるきっかけにもなりうる存在になってきたように思える。小沢氏の行く手(路)を阻む石、それは「政治とカネ」による力関係・支配を嫌う民意というものなのかもしれない。そう考えると石の顕在化は何やら因縁めいている。

 病気自体は政治生命に影響するようなものでない。石は「シュウ酸カルシウム」が主成分。豪腕とカネの力で「衆参」両院の議員ににらみをきかし、政界でいくつも党をつくっては壊し、離合「集散」を繰り返してきた氏の経歴と何やら似つかわしい名前の成分だ。

 水分をまめにとれば再発の可能性も低い。お金も、ストレスも、疲れも、ためすぎると、体にも心にもよくない。御自愛されたい。

 さて、県内に目をやれば、11日から知事と県議会議員44人の資産等報告書の閲覧が始まった。こちらも、県民が知りたい、政治とカネの話。詳しくは12日付紙面をご覧頂くとして、県議の資産公開を少し見てみたい。

 土地と建物を合わせた不動産の項目で「資産ゼロ」は6人。土地は35人が所有し平均標準額は1305万余円、建物所有も35人で平均標準額は754万余円。1億円超が2人。

 預貯金は25人が所有、なしは19人。預貯金合計額は2億2126万余円、1人平均502万余円。借入金の報告は19人で合計額は4億6013万余円。1人で2億円の人も。

 政治の信頼回復を目的に平成8年5月から実施されており、15年の年月を経て一定の評価はできるだろうが、本人名義以外の資産や、本人名義でも普通預金は対象外といった“抜け道”もあり、透明性には疑問符が付く。

 「政治とカネ」については、奈良市の議長選をめぐる裏工作を見るまでもなく、政界における力関係において、絶えずつきまとう話。浄化への道のりは遠いが、今後とも監視の姿勢を緩めてはなるまい。クリーンな政治の実現は政治家任せでは先送りされるだけだ。

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