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金曜時評

百条委を設置せよ - 主筆 甘利 治夫

 奈良市議会の議長選を巡る贈賄工作は、誰が仕組んだのかが焦点になってきた。

 先月15日には大阪地検特捜部が市役所などを家宅捜索し、その捜査の行方が注目されているが、議会自身が真相解明にもっと積極的であるべきだ。

 6月議会で、当時の山本清議長が、無所属の天野秀治議員に「米を5年分あるいは20万円」を渡す見返りに、議長選で白票を投じるよう工作した。天野議員がこのやりとりを録音していたことが発覚し、山本氏もこの事実を認め、議員を辞職している。

 同じことが当時の副議長だった中西吉日出議員にもあった。やはり無所属の酒井孝江議員に行っていた。本紙がその事実確認の取材を求めたが、中西議員はこれを拒否。拒否というより「逃げ続けていた」という方が正しい。

 最初は「相談する人がいるので、必ず取材に応じる」と話していたが、この約束を守らなかった。事実の確認、しかも本人自身のことなのに、いったい誰に相談するというのか。逃げるための口実に過ぎない。何度も取材を求めると、今度は「委員会があるので忙しい」と、拒否の理由を変えた。結局、2週間以上もたって、会見したが、中身は「していない」だけだった。

 そんな内容なら、最初の取材の時に答えられたはずだ。しかも弁護士にも相談しているというから、おかしな話だ。何も「していない」なら、法的に問われることなどないはずだ。

 その会見の中身が問題だ。酒井議員と会った回数や時間は虚偽だったし、「常任委員会の役職の保証」「(選挙での)票を分ける」「(ただで)肉を用意させる」などの、利益供与は否定した。同時に会見した酒井議員はあらためて事実であると証言した。

 利益供与の内容は、中西議員の力でできるものではない。そうした発言ができる根拠、背景があるからできたことだ。

 そこに政翔会(浅川仁幹事長)の存在がある。山本氏もそうだったが、一連の工作の背景に政翔会の「意思」が見える。中西議員などは、昨年、政友会会派を池田慎久議員とともに飛び出し、無所属ながら政翔会の力で副議長に就任した。このため、まるで政翔会の一員とみられても仕方がない。

 池田議員が今春、政翔会入りし、中西議員も役員改選後の入会とみられたが、先日の会見では、「入らない」と明言した。入るかどうかではなく、政翔会と一体だったことが問われているのだ。それだけに中西議員が「年下だが先生」であるとした池田議員にも注目する。中西議員と池田議員の関係は、これまでの2人の言動を見れば、まさに師弟関係にあることが分かる。

 その池田議員が政翔会入りした。今度の工作の“主人公”が政翔会といえる。浅川幹事長は、会見でも関与を否定しているが、そのまま受け止めるわけにはいかない。無所属議員4人も、政翔会と同一行動をとっており、何らかの働きかけが見えるからだ。

 議会制度検討特別委員会(土田敏朗委員長)が、役員改選の在り方などについて論議を進めるとしているが、ゆっくりしていないか。これほどの不祥事に対して、なぜ議会として真相解明をしないのか。今度の議長選は「議会改革」を旗印に結束したはずだ。その議長選が冒とくされたのだから、徹底究明をすべきだ。

 それには虚偽の証言をすれば禁固刑などの罰則がある百条委員会を設置することだ。ここで真相に迫ってほしい。司直の捜査とは別に、議会は議会として解明を進めるべきだ。それが議会の良識でもある。

 

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