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金曜時評

問われる全容解明 - 編集委員 松井 重宏

 奈良市議会の議長選挙をめぐる贈賄疑惑が本紙の報道で発覚して1カ月。この間、前議長の山本清氏が9月2日に議員辞職し、15日には大阪地検特捜部が家宅捜索に乗り出すなど事態は大きな動きを見せてきた。

 ただ、その一方で新たに浮上した贈賄疑惑や組織的な関わりについては、当事者らが関係を否定。9月定例市会も具体的な取り組みを示さないまま、大阪地検特捜部への捜査協力などを盛り込んだ「奈良市議会の信頼回復に関する決議」を可決しただけで閉会し、全体像の究明や議会改革を求める市民の間からは、いら立ちの声も出始めている。

 同議長選では、何が起きていたのか。当時の会派構成は政翔会(浅川仁幹事長)8人▽公明党(山中益敏幹事長)7人▽共産党(山口裕司幹事長)7人▽民主党(山口誠幹事長)6人▽政友会(上原雋幹事長)4人▽無所属7人。このうち最大会派の政翔会が主導する議会運営に反発した共産党、民主党、政友会と無所属の3人が団結。これで“反政翔会グループ”が全議員39人の過半数20人に達することになり、対抗する勢力との水面下の争いが一気に過熱したとみられる。

 投票は当初、6月23日午後に行われる公算だったが、同日午前までに“反政翔会グループ”が20票を固めたと伝わったため、急きょ翌日に延期。この間、政翔会側からは激しい切り崩しが行われたと想像され、事実、24日午前には山本氏が、同グループに加わった無所属の天野秀治議員に対し、金品の見返りを示した上で白票を投じるよう求める“事件”が起きた。

 このとき天野氏は、山本氏との会話を持っていたスマートフォンで録音。現金20万円や米5年分など生々しいやり取りが明らかにされ、山本氏も事実関係を全面的に認めた。しかし、同問題が白日のもとにさらされ、注目を集める中で、逆に周辺の影が一段と濃くなってしまったようにも見える。

 その影の中に逃げ込もうとする「悪いやつら」はいないのか。無所属の酒井孝江議員が天野氏と同じように、当時の副議長、中西吉日出議員から贈賄の申し込みを繰り返し受けたことを明らかにしているが、中西氏は事実関係を全面否定。また中西氏と近い政翔会の池田慎久議員や浅川幹事長も事件とは無関係を主張する。だが、同選挙で中西氏ら政翔会と全く同一の投票行動をとったとみられる無所属議員4人に対しては、新たな疑惑が生じており、光を当てなければならない影の部分はまだまだ多い。

 天野氏は「山本氏は政翔会で主体的立場にない」という点を重視。大阪地検には、別に事件の主導者がいるとして山本氏と氏名不詳の2人を告発しており、同地検特捜部の追及が注目される。

 私利私欲のため議長ポスト、市政への影響力を求めて暗闘を繰り広げる連中こそ影の本体。事件を矮小化させてはいけない。

 

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