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金曜時評

試される県の力量 - 編集委員 北岡 和之

 台風12号豪雨で被災した県南和地域の復旧作業や行方不明者の捜索が続いていた中、今度は台風15号が発生。迷走の末に東進し、二次災害の恐れに地元ではまた不安が募った。幸いにも15号による目立った被害はなかったが、土砂ダムへの対応などを含めて被災地の厳しい状況がさらに続く。

 インフラ面の復旧作業や行方不明者の捜索などのほか、どのような状態にあるのかまだはっきりしない土砂ダムや家屋の倒壊などで避難を余儀なくされている人々への対応も課題。県は国や関係機関などの応援も得て、確実に一歩ずつ進まねばならない。

 加えて「復興」への展望もできるだけ早く示したい。県は今年3月に「県南部振興計画」を策定。五條市と吉野郡のほか、御所市や宇陀市の一部、宇陀郡、高市郡も対象とした広域計画で、「県土の均衡ある発展」のための施策の推進が期待されるが、計画策定から半年後の大災害をどう踏まえるか。

 明るい将来を展望するためには「安全、安心、快適な生活を支える社会基盤の整備」は不可欠。計画の基本方針はゆるがないにしても、今回の災害による影響を具体的な施策としてどう実現していくか、どのような計画修正が必要となっているか、県には大いに検討してほしいところだ。そう遠くない時期に起こるとされている東海・東南海・南海地震で県南部地域への大きな被害も想定されており、県はあらためて、具体的な施策を県民に示していくべきだと思える。

 また紀伊半島地域における広域連携という点では奈良、和歌山、三重3県共同で策定した「紀伊地域半島振興計画」(平成17年度から26年度までのおおむね10年間が対象)の見直しも、この際に求めたい。

 この計画では、本県地域について「被害抑止力向上を図るために、橋りょうの耐震補強や土砂災害対策を推進し、緊急輸送道路の確保など防災基盤の整備に取り組むとともに、当地域の交通アクセスが災害に脆弱(ぜいじゃく)であることから、代替ルートの確保のために県域を越えた迂回(うかい)路の検討が必要」としている。

 基本的なことはきちんと指摘されている。あとは「具体的に」どうしていくかだ。試されているのは、わが県の力量だ。

 地域の復興に向けた検討課題の中で、今後は大きなウエートを占めるようになると考えられるのは、科学的な分析だろう。土質や植栽状況、気候などを含めて本当にこの地域の自然が分かるようになってゆくべきで、その上でしか、確かな「安全、安心、快適な生活」は望むべくもない。科学も歴史も、その他あらゆる分野での知恵・知識を総結集して未来を切り開いていきたい。

 唐突だが、来年は古事記編さん1300年にあたる。熊野から大和へと上った神武天皇が紀伊半島で見たものに思いをはせ、わが奈良県の将来を考えてみるのもいい。

 

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