注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

県の将来像を問う - 編集委員 松井 重宏

 4月の統一地方選後、初めの定例会となる6月県会が週明け21日に開会する。平城遷都1300年祭の成果を受けて「次の県政」を展望する第一歩。事前委員会は既に始まっており、当面の課題に対応するため特別委員会の再編も実施。新たな任期に就いた各県議による中身の濃い議論が期待される。

 また同定例会は、県議とともに改選期を迎え再選を果たした荒井正吾知事にとっても2期目の本格スタートを切る場。その施政方針を示す一般会計補正予算案では東日本大震災対応に5億6100万円、県立奈良病院の建築・造成工事基本設計費に2億1800万円などを計上。27項目の新規事業を盛り込み、総額231億2000万円と6月補正としては過去最大の規模となった。

 本年度の一般会計当初予算は4577億1100万円で前年度より額で76億700万円、率で1.6%減少したが、これは荒井知事が改選を前に新規事業の計上を手控える骨格予算を組んだたため。今回の補正で当初予算比5.1%を積み増すことで同予算は前年度同期を3.4%上回る4811億5800万円と一転、積極型に姿を変える。

 もっとも、補正総額の大半を占める165億4700万円は、文化施設等整備基金から県立医科大学や県立奈良病院の施設整備関係基金へ資金を動かすだけのため、実質的な補正額は残りの66億円弱とする見方も。ただ平城遷都1300年祭のパビリオン建設に備えて平成6年度に設けられた文化施設等整備基金を、あらためて医療関連基金に積み替える政策は見逃せない。

 観光振興から医療・福祉の充実へ―というわけでもない。今回も「わかりやすい道案内の整備」に3850万円、「中南和観光情報発信事業」に1450万円を組むなど、むしろ「観光の荒井」は健在と見えるが、同時に当初予算の編成で示された「経済活性化と暮らしの向上を2本柱として雇用、健康、医療に重点を置いた」という姿勢が補正予算案にも表れた。

 県政の機能が「ベッドタウンから地域経済の自立を図るステージへ移行している」とする荒井知事。県民生活の安全、安心の分野でも他府県依存から脱却が図れるか。高度医療の拠点として県立奈良病院の機能を充実する計画は、まだ人員確保や移転の是非など議論を残しつつも「次の県政」を具体化する一つの方向を示すことになりそうだ。

 また県の将来展望では、自立できる県づくりと併せて、他府県との相互依存、さらには他府県から依存される得意分野の確立といった視点も持ちたい。折からの東日本大震災では被災地支援に加え、原発問題に伴う省エネなど広域対応が求められる課題が急浮上。地域振興を目指す“内政”とともに、関西広域連合の参加、不参加にとどまらない隣接府県との連携を図る“外交”でも荒井県政2期目の手腕が期待と注目を集める。

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