特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

市町村の力蓄積を - 編集委員 北岡 和之

 明日11日で東日本大震災発生から3カ月。地震と津波の余波ともいうべき福島第1原発事故が予断を許さない状況にあるものの、被災地は少しずつ復旧から復興へと向かいつつあるように見える。

 ところが、政府・民主党の復興対策はもどかしいほど遅れを感じさせ、これでは頼りにならないと野党が内閣不信任決議案を提出。菅直人首相の“辞意”らしきものを何とか引き出して決議案を否決にこぎつけたが、今度はいつ辞めるのかと…。党内権力闘争を面白がってはおられず、とにかく震災復興対策の前進をと、いらいらが募るばかりだ。

 民主党のごたごたから震災復興の動きへと目を転じ、遠い関西の地からできる支援のことと、学ぶべき課題について考えることこそ大事。今さらレーニンでもあるまいが、やっぱり「何をなすべきか」なのである。

 いくつもの報道のうち、津波で壊滅した町の家屋を高台に移転新設する話が目に止まった。住民が協議して一定の区画について高台移転しようというものだが、地元(県や基礎自治体)の財政力では十分な補助など望みえず、計画段階で止まっているというのだ。

 ここは国の出番となるが、その前に地元でも十分に考えてほしいことがある。既に言い古されたことだが「どんなまちにしようとするのか」の意思確認だ。ご町内だけでなく、もう少し広い範囲(県レベルでもいい)でのグランドデザイン(全体構想)も描いてほしい。これまでのグランドデザインがあるなら、もう一度検討し直してほしい。壊滅した町の人たちが必死の思いで考えた知恵やアイデアが出てきたら、それは私たち県民にとっても大いに参考になるはずだ。

 必ず起きるとされている東海・東南海地震にどう立ち向かうかは、わが奈良県民にとっても大切な課題。特に予測被害の大きい南和地域の対策は、県民全体で考えねばならないことだ。そして規模の小さい南和地域の町村の住民が自らの心構えと知恵を、今から育てていかねばならない。そのためにも東日本大震災の被災地復興に向けた動き、とりわけ被災地の市町村の動きを注視し続けたい。

 もう20年ほど昔、関西でもグランドデザイン論議が盛んだった。当時のキーワードは「東京一極集中是正」「多極分散型国土形成」「首都機能移転」「関西文化学術研究都市」「関西国際空港」「大阪湾ベイエリア開発」「リニア中央新幹線」「歴史街道」などなど。これらは現在、どんな状況にあるか。

 かつてよく耳にした「関西は一つ一つ」「個性豊かな地域づくりを」。こうした言葉は今でも生きている。情報通信と交通の発達で便利にはなったが、個性のない都市ばかりでは発展はない。ゼロからの再起となる震災被災地には、ぜひ個性豊かな地域の自力構築をと願う。そしてわが関西は、「関西は一つ一つ」として市町村の自立と力量蓄積を進めることだ。頼りない政府などはあてにせず。

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