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金曜時評

姿見えない馬淵氏 - 編集委員 水村 勤

 東京電力福島第1原発は、運転していた1、2、3号機のいずれもが地震からわずか数日でメルトダウン(炉心溶融)を引き起こしていたことが最近になって明らかにされた。原子炉の状態は、核燃料のほとんどが溶けたものの、圧力容器内の水によって一定冷却され、温度の急激な上昇は起きていない、という。

 しかし、本来の「冷温停止」に向けた注水作業を変更し、作業はいまだに進んでいない。しかも、いずれの原子炉も圧力容器や格納容器それぞれの破損を確認・想定しているのだという。原子炉は小康を保っているように見えるものの、危うい状態が続いているとみた方がいいようだ。

 政府内では現場を掌握していない実態が次々と明るみになってきた。事故当初の原子炉への海水注入の一時中断を政府の誰が「言った」「言わない」と言い合い、犯人探しをしている間に昨日、東電が海水注入のファクスを官邸に送っていたことが分かり、実は海水注入は中断していなかったというのだ。言い逃れと、責任回避にしか聞こえない菅首相の発言に、“赤っ恥”をかかせる逆襲が政府・東電の官僚たちによって起こされたのか、そうは思いたくない。

 気になるのは、ほとんど沈黙している首相補佐官の馬淵澄夫衆院議員だ。広報紙ではほとんど毎日、原発事故担当として政府・東電の事故対策統合本部に詰めているという。主として放射性物質の飛散対策などにあたっているようだが、記者会見に出る細野補佐官と違い、ほとんど肉声は聞けない。対策にあたりながら原発をどう考えているのか、党員ならずとも県民は皆聞きたいところだ。

 馬淵氏にもう一つ問いただしておきたいのは、民主党副代表の要職にあった石井一参院議員が今月5月3日から6日までフィリピンに行き、ゴルフを行ったことだ。これには吉川政重、大西孝典の両衆院議員、前川清成、中村哲司の両参院議員が厳しく批判。副代表辞任は当然というコメントを寄せた。一方、前田武志参院議員と滝実衆院議員は政府要員ではないとして擁護する姿勢を明らかにした。問題は馬淵氏だ。本紙の問いかけに対して2週間以上たつが、いまだに石井氏の行為についてその是非を明らかにしていない。

 原発問題については、結果が出てから意見を言えば安全だ。ただそれでは「日々是好日」ならぬ「無事是好日」と見られても仕方あるまい。そのような姿勢は政治家としては許されない。石井氏の問題と合わせて、早い時期に、自らの考えを明らかにした方がいい。

 先日の民主党全国幹事長会議で県連の藤野良次幹事長は党内の内閣不信任決議案に同調する動きを決然と批判した。常識的な判断と思う。しかし、統一地方選敗北の分析と改善点がしっかり総括できるかは疑問だ。政策や候補者選考のあり方など党員の声の吸い上げ方も改善し、もっと汗を流さないと、民主党への不信払拭(ふっしょく)は難しいだろう。

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