特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

古里普請の戦略を - 編集委員 水村 勤

 このところ、民主党政権内部の造反は見苦しいばかりだ。参院比例の若手16人は、政党政治を何と考えているのだろう。衆院からの予算案受領を1日遅らせた西岡武夫参院議長の態度も解せない。

幸い、本県選出議員には乱れはないようだ。国交相を退いた馬淵澄夫党広報委員長は官邸入りが多く、低支持率の菅首相を支える毎日。前田武志参院予算委員長は審議が順調に進まず、頭が痛いことだろう。

それはさておき、民主党政権ができて良かったことが一つある。それは、自民党政権ではなかなか起こり得なかったと思われる、国に対する「地方の反乱」である。それも、知事自らが発言し国の施策を公然と批判や主張をする。

 象徴的な出来事としては、「コンクリートから人へ」のスローガンで本体工事を中止した群馬県の八ツ場ダムの問題である。地元群馬県知事はもとより、流域の首都圏の各知事が批判を浴びせ、現在は国交省が再開の余地も含む再検討を進めている。子ども手当に至っては、多くの知事が地方の財政負担を拒否する発言や予算編成を行った。

 国はあてにならない。是非に及ばず。だから、地方が自信を持って、自ら本領とする地域の主張を国に向かって語る。頼もしくもあるが、喜んでばかりもいられない。財政的には脆弱(ぜいじゃく)な地方が自立に向かうには、相当の無理がある。しかし、地方の設計図は、地方自ら描かざるを得ない。

 こうした状況下、今月24日に県知事選が告示され、4月1日には県議選が続き、同10日に投開票。同17日以降は各地の首長選や市町村議選に突入する。地域にとって歴史的な節目の統一地方選挙である。では、この選挙では何が問われるのか。切り口の一つとしては人口減少と進む高齢化がある。かといって、国の福祉施策を短絡的に問うことは、あまり生産性のあることとも思えない。

 昨年の国政調査の速報集計で、本県の総人口は140万人をわずかに割り込んだ。もちろん、香芝・生駒両市、広陵町など人口増の市町もあるが、吉野郡をはじめとする中山間地域では人口減による過疎化が顕在化してきた。特に吉野郡の各村では65歳以上の老齢人口も軒並み40%を超えている。

 同じ県内でも人口動態に大きな差がある。ただ人口減と高齢化の進展は、テンポこそ違え地域の共通課題。その中で地域の暮らしを守り、なおかつ活性化への道を探っていかねばならない。まさに「古里づくり」の戦略が求められている。最近の御所・田原本両市町のごみ問題への取り組みは注目していい。市町村合併の実りの少ない本県にとって、広域連携が実を結んだ成果である。

 古里づくりは、「普請」という言葉に置き換えてもいい。共同作業の意味合いがあり、お互いに地域を思いやりながら進めてほしいと思う。そんな「古里普請」の志を競う選挙戦になってほしいと願わずにはおられない。

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