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金曜時評

自立へ骨太議論を - 松井 重宏

 平城遷都1300年の節目を越え、次のステージへ重要な第一歩となる県の平成23年度当初予算案が発表された。現任期の満了を5月2日に控えた荒井正吾知事は、新たな判断を必要とする事業の経費計上を抑え、いわゆる骨格予算にとどめたと説明。ただ待ったなしの政策課題が山積する中、実際には新規事業363事業(昨年度当初は419事業)を盛り込むなど、本格予算と呼んでも遜色がない内容となったことは歓迎すべきだ。

 県政トップの知事は4年間の任期にしばられるし、地方公共団体の会計は単年度予算が原則とはいうものの、その編成に当たっては中長期を見据えた確固たる政策方針の裏打ちが欠かせない。前回から知事選の日程が春の統一地方選に加わり、選挙が予算づくりに影響を与える形となったが、3月24日告示の知事選に出馬を表明、来期も県政担当を目指す荒井知事にとって今回の予算案は政見を示したものとも受け止めたい。

 具体的には、同知事が昨年4月までに順次発表した構想案がある。すなわち「ポスト1300年祭構想」「ポストベッドタウン奈良構想」「健やかに生きる構想」「奈良に暮らす構想」「南部を元気にする構想」の5案。そこで示された将来像を見据えた上で「地域の自立を図り、くらしやすい奈良を創る」ために「経済活性化」と「くらしの向上」を2本柱として必要な政策を予算化した。

 特に注目されるキーワードは「ポストベッドタウン」と「地域の自立」。県は戦後「阪奈は一体」の合言葉の下、主に大阪のベッドタウンとして目覚ましい発展を遂げてきた。ただ全国的に人口減少、低成長経済の時代に入り、旧来の中央集権型から地方分権型へ地域づくりの方向転換が図られる中で、県にも自立の努力が迫られている。

 大阪への依存体質から脱却し「奈良でくらし、奈良で働く」という目標を達成するには多くの困難が伴うが、予算案に盛り込まれた地域産業支援・創出▽観光振興▽県内消費拡大▽雇用対策推進▽農林業振興―などの施策を着実に進めていくしかない。特に観光振興はムードメーカーでもあり、平城遷都1300年祭の成果を踏まえ、引き続き経済活性化をリードする役割が求められるし、雇用対策の強化、商工業支援など芽を出しつつある事業にも期待が集まる。

 安易な道州制議論にもつながりかねない関西広域連合の動きに一石を投じ、自立を目指して「志あるチャレンジ予算」を組んだと言う荒井知事。その「志」を継ぐのが誰になるのかは選挙の結果次第だし、県議会も改選を控え、23日に開会する2月定例会は各党派による選挙の前哨戦ともなるが、まずは今回の骨格予算が文字通り「骨のある予算」「骨太の予算」となるよう、県民本位の討議を求めたい。それはまた総合計画策定の遅延で「骨格のない軟体動物みたいな予算」を懸念される奈良市への警鐘にもなるだろう。

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