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金曜時評

合意目指し辛抱を - 編集委員 水村 勤

 通常国会は始まったが、新年度政府予算案の成立が全くおぼつかない。野党は自民党ばかりか公明党も代表質問で「菅内閣は信を問うべき」と、対決色を鮮明にしている。

昨年7月の参院選挙で与党・民主党が敗北し、参院は野党が過半数を占める「ねじれ国会」が生まれたが与野党の間には論戦の場が十分確保されなかったし、国民生活を支えるための合意形成が政党間で全く進まなかった。これは“政治渋滞”という名の不幸の始まりなのだろうか。

原因は与野党の双方にある。参院選の敗北で首相は鳩山由紀夫氏から菅直人氏に入れ替わったが、行き詰まりを見せている年金問題解決一つをとっても、超党派で議論を行い制度改革の方向性をそろえる気迫も姿勢も見られない。菅首相にも野党指導者にも一身に“火の粉”をかぶり、各党説得に政治生命をかける気概が見られない。

 先の尖閣列島沖での中国漁船の領海侵犯問題は、沖縄の普天間基地移転問題とともに、民主党の「外交音痴」ぶりをさらすこととなった。これに加えて小沢一郎元代表の国会招致問題が絡み、昨年9月から年末にかけての民主党の対応は防戦一方、党内対立も深い。さらに衆参両院で多数を占めた時、少数派の野党に真摯(しんし)に向き合わなかったツケもある。野党が攻勢に出るのは当然だ。

 だから、この通常国会で国民生活と日本社会の将来という「大義」のために、与野党が膝詰めの談判を行うような場面が見られるのかというと、見通しは暗い。菅内閣は「社会保障と税の一体改革」を掲げているが今、ここで与野党は何をなすべきなのか。

 憂慮すべきことは、予算案関連の各法案が廃案になることである。特に公債発行特例法案が成立しなければ、赤字国債の発行ができなくなり、仮に予算案だけが衆院で可決されても十分な予算執行ができず、国ばかりか地方自治体の財政運営にも悪影響が予想される。そうした混乱までを、国民は政治家に託してはいない。

 多少時間はかかっても与野党が議論を尽くす中で合意する場面が幾つか出てくれば、日本政治に一筋の光明をもたらすことになる。“政治渋滞”は意味のある政治プロセスとなるはずだ。それとも、これまで通り、国会を不毛の批判と非難合戦の場にしてしまうのか。野党が「早期解散」を旗印に対決姿勢を鮮明にするのは当然だが、それは政策や政治姿勢をただす政党の本義であってほしい。十分な論戦もないままに予算関連法案を廃案に追い込むようなパワーゲームの轍(てつ)だけは踏まないでもらいたい。ここは責任ある国民政党として大義を貫いてほしい。

 国民が自ら選択した“ねじれ国会”が、結果として成果を生む政治に生まれ変わるよう、なお希望を持ちたい。県選出・関係の国会議員は、国民に対して希望のともしびを照らし、国民生活の重みを一身に背負う「国士」として国会論戦にあたってほしい。

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