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金曜時評

奈良の役割大きい - 編集委員 北岡 和之

 きょうから10月。4月から始まる年度で数えると、半年の折り返しだ。猛暑の8月をしのいで少しは気分的にも楽になるかと思っていたのに、あてが外れた。突然、わが国の海を舞台に降ってわいた「事件」によって、9月は県内外ともに熱い1カ月になった。

 米軍・普天間飛行場移設や「政治と金」の問題で鳩山由紀夫前首相、小沢一郎元幹事長が辞任、このあとに実施されることになった民主党代表選挙は9月1日に告示された。菅直人首相と小沢氏の一騎打ちは関心を集め、本紙も連日報道した。同14日に投開票された結果は既にご承知の通り。だが、この選挙戦の最中に「事件」は起きていた。

 沖縄県・尖閣諸島沖で9月7日、領海侵犯で停船を求められた中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突。警告を無視して逃走し、中国人船長が公務執行妨害容疑で逮捕された。日本の国内法に従っての取り調べの後、那覇地検は同25日、船長を処分保留で釈放した。

 この中国漁船衝突事件の波紋は、9月22、23日に奈良市で開催された国際会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)観光相会合にも及んだ。中国の代表は、議長を務める馬淵澄夫国土交通大臣(県1区衆院議員)主催の歓迎レセプションを欠席したほか、同会合で「奈良宣言」を採択した後の共同会見では、奈良宣言の精神に対する支持を表明しながらも「日中が深刻な問題に直面する原因はすべて日本側にある。この状況が正されないとさらに観光に重大な影響を及ぼす」とも言ってのけたのだった。

 いまさら言うまでもなく、わが国と中国との交流には長い歴史がある。建国からまだ300年もたっていない、若い米国などより、互いにずっと歴史と伝統のあるお隣同士だ。従って、平城遷都1300年のわが県と中国との交流も長く、深い。今月には、その平城遷都1300年事業の関連で、記念祝典が開催され、初の東アジア地方政府会合なども予定されている。もちろん、中国の関係者の参加も見込まれている。東アジア地方政府会合に対しては、漁船衝突事件との関係は不明ながら、中国からの不参加が少なくない。だが、荒井正吾知事の「日中友好を続ける中で、奈良の役割は大きくなる」との展望は誤っていないと思う。こんな時だからこそ、県民として奈良の役割に対する自覚を強くしたい。

 それでは、今回の事件について何を述べるべきか。近代国家になってからの国家間関係における、袋小路に陥るような対応を日本政府がしないことだ。菅首相も、尖閣諸島はわが国の固有の領土とし「領土については一歩も引かない」としている。その姿勢を堅持しながら、具体的に当面の処置を重ねていけばいいのではないか。ただし、下手に取り繕うようなことはしないことだ。そして空想のように思われるかもしれないが、近代国家として言うところの「国家」を開け放つ共通の領域を模索してもいいのではないか。

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