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金曜時評

届かぬ国民の思い - 編集委員 北岡 和之

 政権交代後初の参院選の結果を受け、各政党で「選挙総括」が行われている。今回の結果で政界は流動化し、再編へと加速するかもしれないと思ったが、その予感の背景となる話が思わぬところから出てきた。

 国会議員の歳費を月割りから日割り支給に変更する関連法改正案の取り扱いをめぐる問題である。今回当選した参院・新議員の7月の勤務日数は6日間(今月26日から任期が始まった)。それでも月額129万円7000円の歳費と月額100万円の文書通信交通滞在費を合わせた229万7000円が支給される。

 市民感覚からすれば、どう考えてもおかしい。日割りにすれば、各新議員への支給は約44万円になり、約1億1000万円の経費が節約できるのだという。議員側にも言い分はあるらしいが、市民感覚は「しのごの言わずに、さっさと改正しなさい」と訴える。

 しかし、話題になった時点ですぐに各政党の足並もそろうだろうと思ったら、なぜかもたもたしている。このもたもた感が国民の怒りの火に油を注ぐ。政治的な構想・ビジョンという“高尚な”話以前の、政治家の態度・振る舞い・姿勢の問題だ。今回の話は、いわゆる「政治とカネ」問題の一端であり、世論は厳しい。鳩山由紀夫前首相や小沢一郎前民主党幹事長の言動に対して、なぜ世論が疑問符を付け続けるのか、国民の思いを本当によく考えるべきだ。

 政界流動化に向け、参院選の結果というより政権離脱の余震として出てきたのが、社民党の辻元清美・前国土交通副大臣(衆院大阪10区)の離党届提出である。評価は別として、辻元氏なりの参院選前後の総括なのだろう。辞意は固いというが、不可解な感じも残っている。辻元氏の政治構想が社民党とどう食い違ってきたのか、もっと具体的に話すべきではないか。社民党を離党して別の党に移るかどうかということでなく、1人の政治家としての態度・振る舞いに対する信頼度の問題である。あいまいな部分が残る限り、大きな信頼は得られないのではないか。

 国会議員の歳費のことにしても、辻元氏の離党表明にしても、こうした問題が次の国政選挙で「命取り」になる可能性は大いにあると思う。根底には政党や政治家はあてにならないという国民の思いがあり、そのように思わせてしまった政党や政治家に責任がある。

 消費支出28万7014円、うち基礎的支出15万4705円、選択的支出12万6009円(総務省統計局・家計調査報告=2人以上の世帯、平成22年5月分速報)。国民の家計状況を示すこの数字から読み取るべきは、消費支出の半分近くを選択的支出に充てられるまでになったわが国民の政治意識。昨年の総選挙による政権交代など、国民からすればいわば「想定内」だ。政権など簡単に交代する。本当はそうあってはならないが、政党と政治家が頼りなさすぎる。自立した本格的な政党・政治家の出現が待たれる。

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