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金曜時評

民主政権への審判 - 主筆 甘利 治夫

 参院選も公示から2日でちょうど折り返し点となり、終盤に向けて、熱き舌戦が繰り広げられていく。

 選挙の争点は「消費税増税の是非」ということになったが、鳩山前首相が退陣せねばならなかった「政治とカネ」の問題は、どこへいってしまったのか。民主党の小沢前幹事長も同時に辞任しているし、こうした消費税論議に転嫁したことで「小沢隠し」は功を奏した形になった。

 菅首相の登場は、それまで各社の世論調査で20%台にまで落ち込んでいた内閣支持率が一気に回復し、60%台にまで戻した。しかし、新内閣へのご祝儀だったことが明らかになり、わずか3週間で、50%前後にまで急落している。選挙戦に突入し、どのような投票結果になるのか注目されるところだ。

 たしかに首相の顔が変わりはしたが、鳩山内閣で問われてきたことは継続しており、何ら変わってはいない。いわゆる「小沢はずし」の英断は評価された。「しばらく静かにしてもらいたい」という、「小沢隠し」の本音が見えてきた。「しばらく」とは「参院選が終わるまで」ということであるなら、党の体質に変化はない。小沢氏が、各地で堂々と持論を述べて当たり前だ。

 国民は表面的な変化を歓迎したが、支持率の低下が示すように、そこはしっかり見ているのではないか。

 昨年夏の衆院選は、民主党が大勝して政権交代が実現した。まさに歴史的な選挙でもあった。野党の立場だったから、子ども手当や高速道路の無料化といったマニフェスト(政権公約)を前面に出して、政権交代を訴えることができた。自民党などから、財源のことを問われもしたが、「無駄をなくす」から、心配ないとしてきた。

 しかしながら、そのマニフェストが実現不可能であることが、早くも露呈し、今度の参院選でのマニフェストは、現実路線に転換している。しかし、国民に約束したマニフェストの総括と反省は聞こえてこない。

 これでは菅首相が「消費税10%」の増税を言及しても、「なぜ」なのか「何をするのか」が見えない。10%の根拠も「自民党の公約を参考にする」というのでは、政権与党としていかがなものか。社会保障のために「いくら必要」だから「何%の増税」だというのではない。

 消費税に対する国民の反発が強いとみるや、年収400万円以下の低所得者には「全額還付」すると、菅首相が訴えた。党内論議で決まったことを、国民に提示してもらわないと、鳩山前首相が沖縄で普天間問題を語ったことと同じになってしまう。党代表の発言であって、党の公約でないとするなら、何を信じたらいいのか。それが普天間問題での迷走になったからだ。

 いずれにしても、「政権交代」の是非が問われる。民主党にまかせて良かったのかどうか。まだ早いとの声もあろうが、国民の生活はまったなしだ。

 どの政党の訴えも、きれいごとなのかどうかを、しっかり見抜いて一票を投じたい。

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