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金曜時評

選挙の前に論戦を - 編集委員 北岡 和之

 昨夏の総選挙圧勝で念願の政権交代を果たした民主党だが、米軍普天間飛行場移設問題でつまずき、わずか8カ月余りで連立政権から社民党が離脱。さらに鳩山由紀夫前代表(前首相)と小沢一郎前幹事長のトップ2人らに対する、「政治とカネ」問題での国民の厳しい視線にも耐えられなくなり、とうとう鳩山内閣は崩壊した。

 あとを受けた菅直人代表率いる新内閣に期待がかかるが、前内閣と比べても顔ぶれに目新しさもなく、「脱小沢」で点を稼いだだけの選挙内閣に終わるのかどうか。

 各種世論調査で支持率が跳ね上がったといって、それで「一刻も早く参院選を」となる感覚が分かりにくい。菅内閣は今月8日に発足したばかりなのに、今国会の会期は16日まで。きょう11日に所信表明演説をやるそうだが、その残りの日程で十分な法案審議ができるとはどうしても思えない。選挙日程も大切には違いないにしろ、まずは国会で力のこもった論戦を繰り広げてほしい。国民の前で新内閣の実力の一端だけでも披露するのが、選挙に対するフェアな戦い方だと思う。

 以前にも書いて繰り返しになるが、「政治とカネ」問題に対する国民・有権者の目は厳しく“解決”はしていない。国民が問い続けているのは、単純に法的な逸脱があるかどうかではない。これまでの小沢氏の問題での経緯からも、それはうかがえる。民主党の田尻匠県議(前県会副議長)が政治資金規正法違反などで問われ続けているのも同様だ。

 また普天間飛行場問題では、連立政権の一角が崩れるまでに至った。旧社会党から民主党に移った人たちなら「6月15日」を知らない人はいるまい。「60年安保闘争」の最中、昭和35年6月15日に大学生だった故・樺美智子さん(当時22歳)が国会でのデモ隊と警官隊との衝突で亡くなった。菅内閣で官房長官に就任した仙石由人氏は旧社会党出身で、安保問題におけるかつての自民党と現民主党の違いを説明してほしいところだ。

 そして野党側にも、きちんとした政策論争を期待したい。自民党衆院議員の高市早苗氏(比例近畿)はブログで「鳩山内閣の決定に副総理として財務大臣として参加してこられた菅直人氏が大きな支持を集めるのですから、訳が分からなくなってしまいました」(5日付)と嘆いているが、こんなことで落ち込んでいられては困る。これが世論というものだし、国民・有権者の意識の根っこをしっかりと探り当ててほしい。

 政党は、少数になってもそれだけでは解体とはならない。自らの理念や政策の柱がしっかりしていれば、そう簡単には壊れない。

 同じ自民党で、次期衆院選への出馬を予定している奥野信亮・前衆院議員(県3区)はブログで「小沢さんの逆襲で民主党が分裂するような雰囲気もあるぞ」(5日付)と書いているが、いまだに“敵失”に期待しているようではどうにもならない。

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