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金曜時評

問われる結果責任 - 論説委員 小久保忠弘

 「2人の交代がイメージの刷新につながればいい」「再スタートとなることを期待したい」「もう少し長い目で見てあげるべきだ」「事業仕分けなど評価できる部分もある」―。3日の鳩山由紀夫首相の退陣表明を受けて、本紙が聞いた県内各界の声は意外にも穏やかだ。他府県人と違い、敗者に優しい県民性ゆえだろうか。底流には、政権が変わろうが変わるまいが、中央の恩恵に浴してこなかった(だから失うものも少なかった)県内事情があろう。

それにしても、一国の首相が失政と自身の問題で追いつめられ、辞任することがたびたび続くのは国民の不幸だ。昨年の政権交代で民主党が圧勝したのは、自民党に代表される戦後政治が行き詰まり、どうしようもないと判断した有権者が、とりあえず民主党にやらせてみようと政権を託した結果であった。その時点で、今日噴出している政策矛盾や問題を内包していたのは事実だが、それらは政策運営の中で克服されていくだろうと淡い期待を抱いた。

 ところが選挙用のマニフェストはあったが、外交軍事を展望した国家戦略や財源に裏付けられた福祉の将来像は危ういものだった。沖縄普天間基地移設の問題に至っては、解決策は結局持ち合わせていなかった。それどころか、鳩山首相は期限を切って「腹案がある」などと言い募った。結局何もできず、期待を抱かせた県民を裏切った。

 小沢一郎幹事長ともども政治資金をめぐる「政治とカネ」の問題も、これまでの自民党とどこがどう違うのか説明できるものではなかった。ついに「あの一票を返せ」と怒る有権者が現れるのも当然といえよう。だから内閣支持率を見るまでもなく、もはや辞任しか選択の道がなかったのだ。

 発足8カ月余りで道半ば、ただちに結果を求めるのは酷だという意見もある。しかし政治は常に結果責任を問われる。手遅れにならないうちにトップが交代するのは当然だろう。いずれにせよ差し迫る参院選で、あらためて国民の審判をあおぐことになる。選挙民は今度こそ政策の中身で候補者を選びたい。

 県内に目を転じれば、有象無象の政治家が有権者の目をかすめて「自分のため」だけに奔走する姿がある。なかでも業者から不明朗な金銭を受け取ったことが問題になった田尻匠県議や、家庭内暴力が原因で夫人を自殺に追いやったと遺族から指弾されている中村哲治参院議員らは、いまだにその真相を明らかにしていない。田尻氏は問題の責任をとって退いたとはいえ県会副議長職にあった人物。中村氏は28歳の若さで衆院選に初当選し2期務めた。いま法務大臣政務官の要職にある。いずれも民主党県連の重鎮である。

 きょうにも決まる新しい民主党の代表には、たかが奈良の田舎の選挙区の話かもしれないが、これら2人にしっかり指導監督をお願いしたい。県連レベルでは手に負えない問題らしいから。

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