特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

政治不信の根絶を - 編集委員 松井 重宏

 ある程度の年齢まで生きていれば、誰でもたたけば多少の「ほこり」が出るという。確かに全く清廉潔白な人は少ない。ただ、たたけばたたけくだけ「ほこり」が舞い上がる政治家というのはどうか。

 奈良市の松田末作市議が実質的なオーナーを務める建設会社が、同市内で起こした電柱の破損事故で損害賠償を9カ月間も放置していた問題は、本紙取材の直後に同社が関西電力への振り込みに応じたものの、その後も同社が水道工事業者に工事代金の一部を15年以上も支払っていないことが発覚。ほかにも「多くの下請け業者が泣き寝入りしている」という訴えもあり、政治権力を背景にしたような「ほこり」が次々に出てくる。

 大手ハウスメーカーから不明朗な資金供与を受け、宅地建物取引業法や所得税法違反などが問われた民主党の田尻匠県議も、問題はそれ1件だけだったのか。報道を機に、カネに絡む同県議の姿勢を批判する声が相次いでわき出したが、県議会副議長を辞任、党県連の役職も下りることで「ほこり」に水を打つように落着が図られた。

 同問題で民主党県連は、田尻氏が仲介手数料の名目で金銭を受け取っていたことを確認した上で「道義的に問題があり、非難されてしかるべき」と断じたが、一方で同氏が領収書を用意していたことなどについては「司直が関心を持つ可能性もあり軽率なことは言えない。党が関与すべき問題ではない」と徹底追及を放棄。県会副議長の辞任にまで発展した事案を個人的な「悪乗り」だったとして片付けてしまっては、「政治とカネの問題で党が批判を浴びている。県連においても襟を正したい」とする談話もむなしい。

 また他会派を含む県議会の対応も、何とも白々しさが目立った。空席となった副議長の後任選びで急きょ議会日程を変更したが、年末に開かれる第300回の記念議会に影響が出ないよう敢えて臨時議会を避け、期末手当の基準日となる6月1日も考慮に入れたと思われる5月定例会の日程を組むあたり、落ち着いたもの。加えて同記念議会で制定を目指す議会基本条例の検討では、田尻氏の問題をよそに、粛々と「県民への説明責任」「議員の倫理」などを条例に盛り込む方針を承認している。

 まさか党派を超えて「お互い、たたけばほこりの出る体」と、あうんの呼吸で幕引きに応じたわけではないだろうが、有権者が持つ政治不信の根は端的に言えば不祥事を起こした本人だけでなく、政治家全般を「同じ穴のムジナ」と見ているところにある。

 政権交代で国政と地方を結ぶ役割強化を図る民主党県連、当面する参院選で復権の足掛かりを得たい自民党県連。そして第3の勢力を目指す公明、共産、社民各党の県組織なども今が正念場。来春に統一地方選を控え、県政を担う各党各派が本気で襟を正し、「ほこり」を出し切る行動を示してほしい。

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