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金曜時評

潔白の証明を求む - 編集委員 北岡 和之

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の収支報告書虚偽記入事件をめぐっては、国民から厳しい視線が注がれている。各種世論調査にも国民の思いははっきりと示されており、19日付の奈良新聞に掲載された共同通信社の調査結果は、小沢氏の進退に関して「幹事長を辞めるべき」「議員辞職すべき」の合計が73.3%に上ったと伝えた。また、これまでの小沢氏の説明については「納得できない」が86.0%もあったという。小沢氏と東京地検特捜部との“戦争”の内実がどうであれ、要はこうした国民の声をどう聞くかだ。

 小沢氏が東京地検特捜部の参考人聴取に応じることになったようだが、国民の受け止め方は「当然でしょう」であろう。そして肝心なのは潔白の証明につながるのかどうかだ。

 「政治とカネ」「選挙とカネ」は政治家につきまとう根の尽きない問題で、数多くの政治家がこのことで失脚している。問題の中身は多様で、贈収賄もあれば、今回のような報告書の虚偽記入もある。小沢氏の場合、今回の事件で最終的にどこまで問われるのかが見極められねばならない。

 それにしても、小沢氏はとても興味深い保守政治家である。現在に至る政治家としての言動の原点は、私見では小沢氏が自民党を飛び出した平成5年6月だと思う。ここに狙いを定めたようにして出版されたのが氏の著書「日本改造計画」(奥書によると発行日は同年5月20日)で、この著書が原点だとしてもいい。その思いとは何か。

 「日本が『大国』の一つに数えられる存在になったことは誰も否定しないだろう。―中略―何が現在の日本を『大国』にしているのか。技術力であり、経済力である。ところが、その肝心の経済力は民間の手の中にあり、政府の手中にはない。政府はひたすら民間の利益追求を極限まで可能にすることを求められる。政府が果たすべき仕事は『企業弁護士』的な役割なのである」

 少し長いが著書からの引用だ。この感性は鋭い。小沢氏には、このままでは政治家はやってられないという深刻な危機感があったのだと思う。だから、果たすべきは「政治主導」の実現しかないと一筋に進んできた。

 この見方が正しいかどうかは分からない。だが、自民党離党から政権交代までの過程には全くブレはないように見える。そして、自分の思いの実現に不可欠な手段の一つである政治資金・財源のことに細心の注意を払って来たに違いない。へたをすれば「政治とカネ」問題が「命取り」になるのは、十分に承知していたはずだ。

 それだけに、国民の視線は一層厳しくなるのだ。わが国は「大国」の一つになり、国民は力を蓄えて政権交代を実現させた。その大きな意味は、国民は選挙で、いつでも政党・政治集団の首をすげ替えられるようになったということだ。国民の声を真摯(しんし)に聞かずしては、政治主導もへったくれもない。

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