注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

最後は首長の見識 - 編集委員 北岡 和之

 ほんの少し前までは、耳にすることも少なく、一般市民はほとんど関心がなかったと言っていい「事業仕分け」。政権交代となって、いま最も注目される話題になった。

 事業仕分けに目が行くのは、まずはその公開性のせいだ。これまでも国の予算を決めるにあたって、事業仕分け的なことは行われてきたという。当然だと思う。しかし、いわば公衆の面前で「あれは駄目」「これは見直し」とやる手法は、テレビで見ていても痛快だ。自民党の石破政調会長が行政刷新会議の事業仕分けについて「極めて斬新で国民の関心も高い。高い内閣支持率にもつながっている」と、“敵”を評価したのも納得できる。

 もちろん、問題点を指摘した上での評価だが、これを劇場型手法と批判しても始まらない。これまで税金がどのように使われているかがよく分からなかったのが、問題点はあるにしてもオープン化されることで分かりやすくなった功績は大きい。

 問題点の一つは、事業仕分けをするにあたっての査定マニュアルが政府の事務局で作られていたらしいことだ。「仕分け人」の鮮やかな“裁き”に感心していたが、やはりプロ中のプロである官僚が指南していたということだろうか。まあそれでも、政治主導への一歩前進には違いないだろうし、国民はじっくり見守ってゆけばいい。

 ところで、行政刷新会議の事業仕分けは国の話で、地方とは別、という見方もあり得る。本県の荒井正吾知事は「予算の編成権は行政責任。議会の吟味もある。議員内閣制の中央と、首長制の地方政治では違う」とする考え方だ。言葉の裏には「私が最終仕分け人」との自負ものぞく。これも見識だ。

 一方、奈良市は22、23日に選び出した60事業の仕分け作業を行う。対象事業の選定そのものに対する批判・不満もあるようだが、それはひとまずおく。ただ、「議員内閣制の中央と、首長制の地方政治では違う」とする荒井知事の指摘に、奈良市の仲川元庸市長はどう答えるのか聞きたい。つまり、予算編成というものに対するトップとしての考え方を聞きたい。「まず事業仕分けありき」なのかどうか、地方の自治体トップはよく考える必要があると思えるからだ。

 奈良市にしても、トップの市長ほか、職員がそれぞれの担当の場で頑張っているのだし、市民の代表としての議員も税金(予算)の使い方に知恵を絞っている。長時間に及ぶ予算編成作業がどれほど大変か、取材現場で垣間見たことは何度もある。

 奈良市の事業仕分けでは、対象60事業の中に「平城遷都祭」が入っていることが論議を呼んだ。これは象徴的な事態ではないか。税金の無駄遣いをしないというのは、地方自治体にかかわる者にとっては大前提だ。だが、その内容に分け入っていくと、一筋縄ではいかない難しさが露出する。最終的に問われるのが「首長の見識」だろう。

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