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金曜時評

「城門」を開くとき - 編集委員 辻 恵介

 高取町の土地開発公社(理事長・植村家忠町長)による土地売買問題は、次々に新事実が発覚し、ナゾや疑問は深まるばかりだ。この間の報道をもとに、少し流れを整理してみたい。

 今月19日の入札は、植村町長が、密接な関係にあるとされる医療法人中川会(瀧村力理事長)に売却しようと当初から力を入れてきた流れを受けてか、結局中川会のみが参加するという競争入札となり、売却が決定した。何やら、号砲と同時にランナー1人だけが走り出し、すぐにゴールに飛び込んだような印象を受けた。「出来レース」とは、このようなものを言うのかもしれない。

 こうした構図について、前週の当欄で「不当に安く売却しようとした特別背任未遂罪(刑法250条)に当たるのではないか」との指摘があったが、その後、前代未聞の展開があった。形式的な入札を終えて23日に6001万円で売買契約を済ませた土地が、実は「16日付」で奈良地裁葛城支部から仮差し押さえ命令が出されて、登記手続きされていたことが判明したのだった。

 「不動産取引では当たり前」とされる事前調査を怠ったまま差し押さえ物件の入札を行い、売買契約まで結ぶという失態だった。運動会で、ゴールへゴールへと急ぐあまりに、足元を見ずに気持ちだけが先走り、足がついていけずにゴール前でこけた苦い経験を思い出した。そんなに急いでどこへ行く、といった印象がぬぐえないままだ。

 また、公売面積を減少させた点でも特別背任の疑いを指摘する声もあり、町長らの説明責任が問われている。

 さらに、同公社の役員(理事)が7月に変更されていたにもかかわらず、3カ月も未登記のままであることが、奈良新聞社の調べで分かった。「公有地の拡大の推進に関する法律」により2週間以内の登記が義務付けられていて、怠ったときは「20万円以下の過料」という罰則規定がある。選手登録(変更)を忘れたまま、競技に参加してしまったようなものだろうか。

 いろいろな要素が複雑に絡み合っている今回の事態。情報公開の時代に、十分な説明もなく状況が推移していること自体に疑問符が付く。一日も早く閉鎖的な対応から脱却し、分かりやすい状況にしていくことが今求められている。

 同町では、11月23日に恒例の「たかとり城まつり」が開かれる。日本最大級の山城の規模を誇った高取城の歴史を感じることができる、町民にとっても大きな、大切な行事だ。

 人気の時代行列や火縄銃の実演、侍道殺陣演舞、大道芸、骨董市、歌謡ショーなど盛りだくさんの内容で観光客の来町を待つ。そんな歴史ロマンあふれる町に、今回の事態はまことに似つかわしくない。固く「城門」を閉ざすのではなく、すっきりと開かれた形にしていくことを何より望みたい。

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