特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

赤字体質の打破を - 編集委員 松井 重宏

 鳩山内閣が発足して1カ月。次々に打ち出される施策は多岐におよび、改革の成果が具体的な形になるにはまだ時間がかかりそうだが、国と地方の関係では、国直轄公共事業の地方負担金制度見直しについて閣僚と全国知事会が協議する場が今月中にも開かれる見通しとなるなど、政権交代が地方行政に与える影響も徐々に見え始めている。

 そうした中、県内では各市町村の平成20年度普通会計決算が発表され、厳しい台所事情があらためて浮き彫りになっている。新政権のもとでも着実に進むとみられる地方分権に備え、基礎自治体の財務改善は急務だが、同決算から適用される早期健全化団体には県内から御所市と上牧町の2団体が該当する事態に陥っている点は見逃せない。

 早期健全化団体は、地方公共団体の財政の健全化に関する法律で新たに位置付けられた措置。実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率のいずれかが基準を超えた市町村は健全化計画の策定が義務付けられ、国や県の指導を受けながら具体的な改善策に取り組むことになる。

 より深刻な財政再生団体に比べ、やや財務状態が良い早期健全化団体に指定されたことは、いわば「レッドカードではなく、まだイエローカードを受けたところ」とも言えるが、それでも行財政改革が待ったなしの状況にあることは間違いない。

 特に重大なのは県内から2団体も早期健全化団体が出たこと。御所市は実質赤字比率と実質公債費比率の2項目、上牧町は実質公債費比率でそれぞれ基準を超えたが、実質赤字比率で基準を超えた団体は全国で御所市と北海道夕張市(財政再生基準以上)しかなく、実質公債費比率で対象となった団体も全国で20団体にとどまる中、2団体を抱える県内の状況はいかにも厳しい。

 基準には達しなかった市町村も含め、平成21年度決算で実質収支が赤字になった団体数は県内に7団体あり、全国19団体のうち4割近くを占めていることを見れば、県内の市町村に“赤字体質”があると言わざるを得ないのではないか。

 上牧町も今年2月に策定した改革集中プランの中で「本町の財政構造は各年度に必要な経常な支出を経常的な収入で賄うことができない赤字体質であるといえます」と自ら分析している。

 県は市町村に対する指導で、人口規模が類似する他府県の市町村に比べて職員数の多い団体を指摘。保育所の増員配置、清掃部門の直営など個々の問題点を挙げるとともに、健全化計画を策定する市町村を支援するため無利子の貸付金を予算措置している。ただ市町村の赤字が“体質”なら、より抜本的な取り組みが全県的に求められるだろう。

 先に取り組まれた「平成の大合併」の経験も踏まえ、積極的な県の指導、市町村の取り組みを求める声が強まりそうだ。

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