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金曜時評

中身問われる友愛 - 論説委員 小久保 忠弘

 鳩山由紀夫首相の新内閣がスタートして2週間。就任以来、各閣僚の動きも活発で、休みを返上しての現地視察や外交交渉など働きぶりが目立つ。発足直後の高支持率が示す国民の期待を背に、フル回転といったところか。ここは張り切りすぎて、息切れしないよう願いたい。

 とはいうものの、評論家立花隆氏が、本紙(9月28、29日付)に寄せた鳩山内閣に対する評価はじつに厳しい。まず「脱官僚依存」のスローガンのもと、行政のプロである官僚を敵に回して政策運営はできないことを指摘。会見でマニフェストの「お約束」だけしか語らない大臣を「こいつらアホか」とこきおろしている。

 マニフェストだけしか言えない政治家は、マニフェストを作った「党官僚」への依存を強めると説く。「政治家にとって一義的に重要なのは、自立心であり、自分の考えを持つことだ」と立花氏。

 そういえば、各地で当選してきた大量の新人議員の中には、テレビ映りがよく、パフォーマンスだけがお上手な手合いがいないとも限らない。立花氏ならずとも、「今までの国会議員のように、地方から陳情に訪れた地方役人の前で官僚を呼びつけて国会議員の力を見せつけるような変な政治家になってほしくない」(9月30日付声欄「鳩山首相に一言」)というのがおおかたの県民の意見であろう。

 さらに、彼らを率いる小沢一郎幹事長の存在を念頭に「スターリン的な党組織の専制政治化がすでにもたらされているのではないか」と危惧(きぐ)している。選挙で勝って多数派を形成するのが民主政治の基本だが、まず勝つための選挙戦術ありきの姿勢は「数による力の政治」であり、首相のいう「友愛の政治」とどう折り合えるのか。

 「新政権をどうとらえたらいいのか戸惑いを感じている昨今である。何が何でもと政権とりをあせった民主党。当選者の中には2、3日しか選挙を戦わず当選した人や、自己破産した方も当選とか。あまりにおそまつな中身が報じられるたびに落胆する毎日である」(本紙声欄)と、テレビの前で浮かれてばかりの有権者だけではないことが分かる。

 建設中止とされた群馬県や熊本県のダム現地の様子を見ながら、かつてダム建設で揺れた県内で同じ経験を持つ人たちは、国の政策変更で右往左往させられている事態を、決して人ごとではないと感じているはずだ。

 水没地域の反対運動が終息すると条件闘争に移り、補償交渉がまとまると、去る人は去る。残った住民はやむなくダムと「共生」する道を選ぶ。県内には巨額な国の対策費を村づくりに生かした自治体もあった。ダムが完成した県内の例は先進地モデルなのだろう。それだけに、今の八ツ場ダムの事態は同情以上にやるせなさを覚える。

 人間を生かすためにマニフェストがある。くれぐれもマニフェストのロボットに成り下がってはならない。

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