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必要な感動の共有 - 編集委員 水村 勤

2009年9月25日 奈良新聞

 平城遷都1300年祭の開幕まで、100日を切った。23日には記念事業の100日前記念イベントが奈良市の県文化会館と前庭広場で開かれ、大勢の人でにぎわった。

1300年祭が近づく中で存在感を増しているのは、文化庁による第1次大極殿の復元工事と、公式キャラクターの「せんとくん」だ。大極殿は素屋根があらかた取り払われ、秋の日差しを浴び鴟尾(しび)が照り映える。平城宮の重厚な建物群が浮かんでくるようだ。一方の「せんとくん」は、昨年4月以降のキャラクター像をめぐる論争で全国的な関心を呼び起こし、「まんとくん」など他の“ゆるキャラ”も触発されて登場。各地のイベントにも出場し、抜群の知名度。その貢献度は大と言ってもいいほどだ。

 すでに明らかになっている平城京歴史館や遣唐使船の展示は平城京の歴史文化を象徴するものだが、何といっても一番の目玉は第1次大極殿である。天皇の即位や元日の朝賀に使われた宮殿であり、見どころとしてのボリュームに心配はない。記念事業の助走期間は少ないが、大切なことは、本県を訪れる人々にテーマの「はじまりの奈良」に触れていただき「めぐる感動」へいかにつなげるか。その役割を果たす人の力を考えたい。

 例えば、営々と続く平城宮跡の発掘調査は飛鳥などの古墳調査などと比べると、地味である。木くずなどの分析から木簡に記された文字に光が当たり、それから古代史の一端が明らかになる。しかし、研究成果が臨場感のある言葉として人へ直接伝えられる時、人の感動を呼び起こすのではないだろうか。

 かつて冬の吹きさらしの朱雀門で、案内をするボランティアの方から平城京の歴史に触れる楽しさをうかがったことがある。学ぶ楽しさは人生を大切な生きる糧である。その意味で発掘イベントや歴史探訪ツアー、ウオーキングなどといった体験イベントに携わる人々の研さんや接遇がどう訪問者の感動につながるのか、大事な試金石だろう。

 記念事業のテーマ「はじまりの奈良、めぐる感動」は、本県観光の推進とも重なる。

 平城宮跡に近い奈良ロイヤルホテルの八坂豊社長は「奈良に住む私たちが自分たちの生活のかかわりの中で奈良を語ったら、1300年祭で奈良を訪れる人々にもっと興味を持っていただけるのではないか」と語る。このホテルの朝食には、市内の生産者の搾り立ての牛乳や豆腐、県内産のヨーグルトが供される。「別にごちそうではない。ただ、奈良にこだわりを持った生産者の食材をできるだけ使い、もてなそうと努めている。素朴かもしれないが奈良の文化の提案」でもある。

 当地を訪れてよかったという感動は訪問者が味わい、感じることだ。県民が交流するさまざまな場で、きっと奈良を訪れた喜びや満足感についての言葉が発せられるに違いない。得がたい感動の言葉を共有し「はじまりの奈良、めぐる感動」を考えていきたい。

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