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金曜時評

高速無料化の是非 - 編集委員 辻 恵介

 民主党・鳩山新内閣が16日発足した。「オールスター内閣」などとも呼ばれるが、確かにマスコミでよく見かける人物が多い、というのが第一印象だ。ただ組閣自体は、その分野に詳しい人物をあてた実務型の布陣でオーソドックスな感じを受けた。これにより国民には、一定の安心感のようなものが生まれたのではないか。

民主党は、マニフェスト(政権公約)で、議員や霞が関の既得権益の一掃を打ち出し、政治家と官僚の関係を抜本的に見直して、日本の政治を官僚主導から政治主導に変えていく、としている。ここが新政権の大きな柱になろう。戦後の長い間に築かれた数多くのしがらみや政官の癒着といった堅固な城のような「特殊な構造物」をどう解体していくのか、その手腕が問われるところだ。

 国家戦略局、行政刷新会議といった新しいポストにおける仕事ぶりにも注目が集まる。当然、新機軸を打ち出すわけだから、それが実を結ぶには時間がかかるだろうが、そうのんびりもしていられないようだ。

 来年7月の参議院選挙が今後の政治日程におけるヤマ場の一つとされ、それまでに国民に対して一定の成果を目に見える形で提示しないと、国民に失望感を与えることになり、選挙結果にも大きく影響が出ることが予想されている。予算編成も含め、深刻な不況・雇用対策などでも特色を打ち出せるかどうか。

 民主党の公約の一つに「高速道路の原則無料化」がある。これをめぐっては最近、経済界をはじめ各方面から反対や疑問視する声が上がっている。

 無料化すると不要不急の車が流入し、渋滞が増え、バスや運輸関係の定時運行の妨げにもなるという主張が中心だ。車利用のレジャーが増えると、鉄道や船舶などの利用客が減り、その業界には深刻な打撃を与える。前政権が今年の春に実施したETC搭載車の土日祝日「1000円乗り放題」でも、フェリー業界などが悲鳴を上げたのは記憶に新しい。

 また、移動時間や交通費などの制約のために今までは宿泊地となっていた観光地が、無料化により素通り地点となり、より遠方の観光地に宿泊客を奪われる事態も考えられる。宿泊客の一極集中が起こらないとは限らない。観光立県、奈良にとっても、とても無関心ではいられない。

 何よりも石油を輸入に頼っている国が、ガソリンの消費を増やす政策を取ることには疑問が残る。需要と供給のバランスや適正価格は維持できるのかどうか。排気ガスによる環境汚染の悪化も大いに懸念され、「温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比25%減」とした鳩山氏の政策表明は矛盾する、という英紙の報道もあった。

 車を持たない人には、あまり恩恵がないように感じられるこの施策。きちんと説明責任を果たしながら、段階を踏みつつ、慎重に実験や検討を続けていくことが求められている。

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